GWASにより同定されたぺプチジルアルギニンデイミナーゼタイプ4(PADI4)欠損マウスについて、関節リウマチモデルマウス実験を行ったところ、発症率の有意な低下と炎症性サイトカインの減少が観察された。PADI4遺伝子は他のPADI遺伝子、特にPADI2やPADI6の発現により、機能的に補填されていることが予想されるデータが得られた。PADI4と他のPADI遺伝子はLDブロックが別であることから日本人の場合は遺伝学的にはPADI4が関節リウマチ関連遺伝子として考えられているが、PADI2、PADI6遺伝子もPADI4遺伝子の変動に伴い、発現量が変化するという形で疾患に関わっている可能性が考えられる。 そのため、PADI4の欠損により誘導されるPADIの中でも最も遺伝子発現領域も重複し、またGWASでも異なるコホートによっては関連が示唆されているPADI2遺伝子を欠損したマウスを作製し、その解析を行っている。PADI2遺伝子を欠損させたマウスをもちいて、PADI4ノックアウトと同様に関節炎誘導実験を実施したところ、PADI4と同様に関節炎の抑制が観察された。しかしながら、PADI4で観察された、他のPADI遺伝子の誘導は起こらず、また明確なサイトカインへの影響も見られなかった。一つはB6バックグラウンドのマウスを用いたことによる発症率のばらつきも原因として考えられるが、発症率が良いケースでもはっきりした違いは見えていない。このことからPADI2は単独ではなく、PADI4と連携して関節リウマチの発症に影響している可能性が考えられる。現在、PADI2とPADI4遺伝子のダブルノックアウトマウスの作成も試みているが、体制致死性の可能性を示唆するデータが得られており、PADI4をコンディショナルKOマウスに変更し、再度ダブルノックアウトの作成を行っている。
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