研究課題/領域番号 |
16K08635
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
行方 和彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 副参事研究員 (70392355)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 緑内障 / アルツハイマー病 / Dockファミリー分子 |
研究実績の概要 |
Dock3は中枢神経組織に特異的に発現し、Rac1を活性化することでアクチン繊維の重合を促進するguanine nucleotide exchange factor (GEF)である。申請者はこれまでにマウスにおけるDock3の過剰発現が網膜神経節細胞の軸索再生や神経保護を促進すること、およびDock3がBDNF-TrkB受容体シグナルの下流でリン酸化修飾およびそのGEF活性を増大させることなどを明らかにした。本年度の研究では、constitutive active TrkB受容体(変異型TrkB受容体)の新規作製に成功し、下流シグナルの増幅をERK活性の測定により確認した。この変異型TrkB受容体の過剰発現では、リン酸化Dock3の増大も確認することができ、BDNF-TrkB受容体シグナルがDock3を制御していることが改めて確認された。変異型TrkB受容体では、そのシグナル伝達には脳由来神経栄養因子(BDNF)を必要としないことから、今後のDock3のシグナル伝達の解析には非常に重要なツールとなる。さらに、この変異型TrkB受容体はAAVベクターへの組み込みを完了しており、マウス個体の網膜組織への強制発現もすでに試験中である。さらに、TrkB受容体の活性を光刺激で自在に制御するための複数のplasmid ベクターについてもすでに構築を終えており、Dock3制御の分子機序を解析するための材料は十分に整ったと考えらえる。一方、マウス網膜や視神経などの病態解析を進めるうえで、透明化組織を利用した組織の立体イメージの構築にも挑戦した。これまでのところ両組織における透明化処理および免疫染色の手法を確立しており、神経細胞の形態など詳細な病態を立体的な像としてらえることを可能とした。今後はこれら手法を駆使してDock3の機能解析をin vitroとin vivoの両面から進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規のマウス系統作製およびその飼育繁殖が順調に進んでいるため。また、in vitro実験に使用予定の新規ベクター作製、およびIn vivo解析に使用予定であるAAVベクターの作製も計画通り順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は神経保護および軸索再生について in vivoにおける解析を行うため、疾患モデルマウスを用いた検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用した消耗品や試薬類の効果的な節約に成功したので支出額が抑制された。
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次年度使用額の使用計画 |
研究試薬の購入、論文出版、学会発表などに使用予定である。
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備考 |
東京都医学総合研究所 視覚病態プロジェクト http://www.igakuken.or.jp/retina/
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