研究課題
前年度の解析結果から、主任研究者らは、ポリコーム複合体の一つで、がん抑制遺伝子のサイレンシングに関わっているBMI-1が標的とする糖転移酵素遺伝子について調べたところ、C2GNT2の発現がBMI-1により制御されていることが示唆された。そこで本年度は、がんの促進におけるBMI-1の糖鎖構造制御を介した役割について検討した。その結果、BMI-1ノックダウンにより、C2GNT2の発現が上昇し、糖鎖構造がcore1型からcore2型へと変化することが分かった。また、ヌードマウスへの皮下移植実験において、BMI-1を移植されたグループではコントロールに対し、腫瘍の成長が抑制されたが、C2GNT2とBMI-1の両方をノックダウンした細胞を移植されたグループは腫瘍形成能が著しく亢進し、BMI-1ノックダウンによる腫瘍形成能力の低下が消失した。このことから、C2GNT2は腫瘍の増殖を抑制する機能を持つと考えられる。更に、細胞運動能と浸潤能を調べたin vitro実験において、BMI-1をノックダウンすると運動能・浸潤能ともに著しく低下するが、C2GNT2をノックダウンしておくとBMI-1ノックダウンによる運動能と浸潤能の低下が消失することから、C2GNT2発現の減少は細胞の運動能と浸潤能を高めることが示唆された。以上の結果から、BMI-1はC2GNT2の発現抑制を介して糖鎖構造を制御し、異常細胞の遊走能や浸潤能を高めることでがんの促進に関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究推進の結果、BMI-1はC2GNT2の発現抑制を介して糖鎖構造を制御し、異常細胞の遊走能や浸潤能を高めることでがんの促進に関与している可能性が示唆された。
本年度の研究推進により、糖転移酵素遺伝子C2GNT2はがん細胞の運動能と浸潤能を抑制し、がん抑制機能をもつことが示された。このため、今後、生体内での転移能におけるC2GNT2の役割について検討していく。また、がん化の過程においてC2GNT2遺伝子がサイレンシングされる機構についても解析を行う。
綿密な研究計画による研究費の効率的な使用により、費用を節約することが出来た。本年度の未使用額は遺伝子改変マウスを用いた実験に掛かる費用として使用し、次年度分と合わせ、研究費を適切に使用する。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
Cell structure and function
巻: 42(2) ページ: 159-167
10.1247/csf.17019