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2016 年度 実施状況報告書

遺伝性乳がん原因遺伝子産物BRCA2のリサイクリングエンドソームにおける機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 16K08639
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

高岡 美帆  東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (90770701)

研究分担者 三木 義男  東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (10281594)
中西 啓  東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50321790)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード乳がん / リサイクリングエンドソーム / BRCA
研究実績の概要

BRCA2のリサイクリングエンドソーム局在の証明について、リサイクリングエンドソームマーカーRab11との共局在について共焦点顕微鏡を用いて観察した。その結果、小胞の一部で一致が確認された。しかし、細胞からエンドソームライゼートを単離してWB法により検出する実験系からはRab11との共局在について明確なデータが得られなかった。これらの結果から、BRCA2リサイクリングエンドソーム局在については、未だ確定できていない。
また、リサイリングエンドソームで機能するRab11-FIP3については、BRCA2の免疫沈降物のマススペクトル解析から相互作用の可能性が示唆されており、さらに、Rab11-FIP3と相互作用する細胞質ダイニンの構成因子LIC2とBRCA2との直接結合については、28年度に研究分担者により確定された。そこで、Rab11-FIP3との相互作用を確定するため、内在性及び過剰発現の系により免疫沈降、WB法で、様々な条件による検証を行ったが、有効なデータを得るに至らなかった。過剰発現系において相互作用が確認できなかったため、マススペクトル解析のMRM法による検証まで至らなかった。
BRCA2とRab11-FIP3の相互作用について確定に至らなかったので、両者の結合阻害によるリサイクリングエンドソームに対する影響を検証することが困難となり、他のアプローチが必要となった。そこで、BRCA2抑制によるRab11-FIP3細胞内局在の変化について検証した。その結果、間期におけるRab11-FIP3の中心体局在の減少が確認され、BRCA2がRab11-FIP3の局在に影響する可能性が示唆された。
また、本課題の最終年度に向けてがん細胞の浸潤、遊走能測定に関する実験系の構築を兼ねて進めていた研究において、がんの浸潤および遊走に関する新しいシグナル系を明らかにし、誌上発表することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成28年度の研究結果により、BRCA2 のリサイクリングエンドソームへの局在およびリサイクリングエンドソームにおける BRCA2 の相互作用分子の候補であった Rab11-FIP3 との相互作用確定に至らなかった。この二点について証明するための実験に関して、仮説通りの結果が得られず困難を極めたため、予想以上に時間を要した。具体的には、リサイクリングエンドソームへの局在の証明に関しては、共焦点顕微鏡において観察を行うにあたり、免疫染色による細胞内の BRCA2 検出に適切な抗BRAC2抗体の選定が難しく、何種類もの抗体の検討が必要となった。また、培養細胞の過剰発現系を利用した免疫沈降法および WB 法による BRCA2 と Rab11-FIP3 との相互作用の検出に関しては、相互作用のデータを仮説通りとることができず、様々な実験条件を検討する必要に迫られ、予定以上に時間がかかった。このように実験を試行錯誤した結果、Rab11-FIP3 との相互作用の確定に至らなかったため、パートナー分子との結合阻害からリサイクリングエンドソームへの影響を検証するという項目においては実施することが困難となり、実験計画の変更を迫られることとなった。以上の理由により、やや遅れているとした。

今後の研究の推進方策

Rab11-FIP3 との相互作用が確定できなかった現状を考慮すると、パートナー分子との相互作用阻害からリサイクリングエンドソームへの影響を検証することは難しい。また、Rab11-FIP3 と共通の細胞内局在から仮説を立てた、細胞質分裂および M 期スピンドル形成に対してリサイクリングエンドソームの機能を通して与える影響について有効なデータが得られるとは考えにくい。
そこで、平成29年度は、まず、BRCA2 単独で発現抑制した場合の細胞内のリサイクリングエンドソームへの影響を検証する方針に変更する。具体的には、BRCA2 発現抑制時のリサイクリングエンドソーム小胞の細胞内分布についてリサイクリングエンドソームマーカーを指標にした観察や、リサイクルされる代表的な分子であるトランスフェリンの輸送系を用いた検証方法を実施する。その結果として、BRCA2 発現抑制によりリサイクリングエンドソームへの影響がみられた場合には、Rab11-FIP3 以外の新たな候補分子の探索を行う必要があり、Rab11-FIP3 が候補として挙がった際に実施したマススペクトル解析のデータを見直し、再度パートナー候補分子の選定を行い、相互作用を検討する。
BRCA2 の発現抑制によりリサイクリングエンドソームへの影響がみられなかった場合の打開策としては、BRCA 遺伝子の変異と関連が深いとされているトリプルネガティブ乳がんとリサイクリングエンドソームとの関係から、本研究課題を検討する方針に変更する。トリプルネガティブ乳がんにおいて特異的に発現のみられるレセプター分子を選定し、そのリサイクルシステムの制御方法を検討し、レセプターの細胞膜上へのリサイクルが正常に機能しない場合に、乳がん細胞の増殖、浸潤、遊走能に与える影響の検証を行うことを視野に入れて研究をすすめることとする。

次年度使用額が生じた理由

BRCA2 のリサイクリングエンドソーム局在およびリサイクリングエンドソームにおけるパートナータンパクの決定が仮説通りに進まず、これらの実験に予定以上に時間がかかった。BRCA2 と Rab11-FIP3 の相互作用について確定に至らなかった結果、当初の計画で実施予定だった、両者の結合部位の決定や結合阻害によるリサイクリングエンドソームへの影響を検証する実験を実施することができなかった。実験方針を変更して BRCA2 単独の発現抑制による Rab11-FIP3 の細胞内局在への影響の検証を行ったが、この実験に必要な研究費は当初予定額よりも少なく済んだ。このように、研究計画の変更により、当初購入予定だった試薬類を年度内に購入する必要がなくなり、当初予定していた予算額を完全に消費することなく、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

平成28年度に、リサイクリングエンドソームにおける BRCA2 のパートナー分子が決定しなかったので、29年度は、研究計画の変更が必要となった。まず、BRCA2 単独の発現抑制によりリサイクリングエンドソームへの影響を検証する。影響がみられた場合には、Rab11-FIP3 以外のパートナー分子の探索を行う。リサイクリングエンドソームへの影響がみられなかった場合には、BRCA 遺伝子の変異と関連が深いとされているトリプルネガティブ乳がんに着目して、トリプルネガティブ乳がん特異的に発現するレセプターのリサイクリングシステムから乳がんの増殖や転移につながるメカニズムの解明を行っていく方針に変更する。具体的には、トリプルネガティブ乳がん細胞株を用いたリサイクリングシステム阻害からの細胞増殖や浸潤、遊走能に与える影響を検証する。これら計画変更により必要となる新たな実験に予算を使用していく計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] FKBP51 regulates cell motility and invasion via RhoA signaling.2017

    • 著者名/発表者名
      Takaoka M, Ito S, Miki Y, Nakanishi A
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 108 ページ: 380-389

    • DOI

      10.1111/cas.13153

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [備考] 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 分子遺伝分野 研究室紹介

    • URL

      http://www.tmd.ac.jp/mri/mgen/research.html

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公開日: 2018-01-16  

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