研究課題/領域番号 |
16K08640
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 めい子 (児玉めい子) 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (20372592)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | EGFR変異 / 肺がん / MiSeq / GWAS / SNP |
研究実績の概要 |
本研究は日本人における肺がんリスクに対するEGFR遺伝子変異の寄与の解明のため、次世代シーケンサーを用いて変異の有無を高速に解析するプロトコールを確立することを目的としている。EGFR変異型肺がんリスクに関連する遺伝子は、その変異を伴う肺がんの頻度が欧米人とアジア人で異なることから、人種・遺伝的背景によって異なることが予想される。この知見により、日本人における肺がんの、新たな早期診断・予防・治療を可能とし、医学の観点から大きな貢献となる。 EGFR 遺伝子変異はチロシンキナーゼドメインに集中している。特に頻度が高いものはエクソン19の欠失変異と、エクソン 21の点突然変異 L858Rであるが、エクソン18と20の点突然変異等も同時にシーケンスできるプロトコールを作製した。前年度までに1ランあたり768サンプルを解析できるようなバーコード設計と条件検討を行った。MiSeqシステムのランには、これらの768サンプルをプールし、1回のランで同時に解析を行う。まずはprimer dimerを除くためAmpureビーズを使用してclean upを実施した。目的のクラスター密度を得るためには複数サンプルを等量ずつプールする必要がある。サンプル間での量の均一化するためビーズを使用し、DNA量のnormalizationを行った。768ライブラリを1つにプールし、リアルタイムPCRで定量後、シーケンスを開始した。ラン試薬にはMiSeq Reagent Kit v2を用いてペアエンドシーケンスを実施した。 MiSeqで産出されたデータは、シーケンシングと並行して専用のサーバーに転送され、得られたシーケンシングデータに品質管理を施した。GATKのHaplotype CallerとUnified Genotyperで参照配列と比較しmutation callを実行した。サンプルの平均リード数は3200ほど、そのうち平均3000ほどが正しいゲノム上の位置にマップされた。768検体の4つのエクソンのシーケンスを現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コスト削減のため使用する試薬を最小限にするプロトコールを実現させるのに時間を要した。また、ランのために最低限必要な試薬のみの購入でも高額になってしまったため、2つのエクソンを1500検体分ではなく、4つのエクソンを768検体分シーケンスすることにした。
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今後の研究の推進方策 |
申請者らは、肺がんの発症リスクに関連する遺伝的因子を同定するため、約61万のSNPをマーカーとして、日本人集団の肺がん患者検体2,415例、対照群検体4,794例の全ゲノム関連解析(GWAS)を実施している。その結果を用いて、検体をEGFR変異有りと無しの2グループに分け、subtype解析を実施する。また、これまでに報告されたEGFR 遺伝子変異の頻度は、東洋人(32%)・非東洋人(7%)、男性(10%)・女性(38%)、非喫煙者 (47%)・喫煙者(7%)、腺癌(30%)・非腺癌(2%)など臨床背景に強く関連していることが分かっている。本解析に使用する検体の臨床情報は全て揃っているため、性別・喫煙情報・肺がんの組織型等でのsubtype解析も実施する。 EGFR変異型肺がんリスク感受性遺伝子の全貌を明らかにすることで、人種間や病態・環境因子・生活習慣における相対的貢献度を解明することが可能になる。遺伝的多型性とがんリスクの検討は、発がん機構の解明に寄与すると共に、ハイリスク者を特定しがん予防を実践する上にも非常に有用である。
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