研究実績の概要 |
近年多くの肺がん感受性マーカーが明らかになってきたことにより、今後は原因遺伝子に応じた治療が開発されることが期待される。日本人における肺がんリスクに対するEGFR遺伝子変異の寄与を検討するため、我々はEGFR突然変異の有無を高速に解析するプロトコールを確立し、変異の有無と肺がんの組織型・喫煙状況・性別など臨床病理学的因子との相関関係を統計学的に解析した。 まずは1ランあたり768 サンプルのシークエンスができるプロトコールを確立した。768検体をシークエンスした結果、EGFRのエクソン18~21に変異が見つかったのは214件体 (27.9%)、そのうち25検体では2つ以上のエクソンに変異が同定された。未知の変異は同定できなかった。 過去に申請者らは、日本人集団の肺がん患者検体2,415例、対照群検体4,794例の全ゲノム関連解析(GWAS)を実施している。今回のシークエンス結果を足すと、計551件体がEGFR変異あり、1008検体が変異なし、ということが判明した。GWAS結果を用いてEGFR遺伝子変異の有無を考慮した関連解析、さらに肺がんの組織型・喫煙状況・性別などとの相関関係を統計学的に解析した。EGFR変異陽性 vs コントロール群など様々なsubtype解析を実施したが、GWAS有意を示す新たなSNPは見つからなかった。しかしながら患者とコントロール群の間で有意差を示すSNPは多数見つかっているため、今後は独立した集団の検体を用いた再現性検証のため検体数の増加につとめる。 日本人の肺がんのおよそ30~40%は、このEGFR遺伝子変異が原因で起こることが知られている。感受性遺伝子を特定し発症危険群を特定することは発症予防を目的とした治療を可能とする研究になることが期待され、医学の観点からも大きな貢献となるであると考えている。
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