研究課題
抗体アレイを用い、マクロファージにおいてアンドロゲンによって誘導される液性因子(ケモカイン、サイトカイン)の同定を行った。THP-1をデキサメサゾンで刺激して得られたマクロファージに合成アンドロゲンR1881(10uM)でさらに24時間刺激し、蛋白を抽出して液性因子の発現を検討したところ、Chemokine (C-C motif) ligand 5 (CCL5)、CCL20、CCL22、Macrophage migration inhibitory factor(MIF)の発現が誘導されることを見出した。中でも最も強く誘導されたCCL5に着目し、乳癌培養細胞MCF-7にCCL5リコンビナント蛋白を添加して遊走能を評価したところ、MCF-7の遊走が有意に亢進した。また、乳癌病理標本を用いてCCL5の免疫組織化学を施行したところ、CCL5は乳癌細胞と間質細胞の両方に発現が見られた。マクロファージマーカーであるCD163とCCL5の二重免疫組織化学を行ったところ、共陽性細胞が間質領域に確認され、腫瘍浸潤マクロファージがCCL5を発現することが分かった。予後解析では、間質細胞のCCL5陽性症例は有意に予後不良であることを見出した。CCL5の腫瘍促進の機序をさらに詳細に精査するため、CCL5の受容体のひとつであるC-C chemokine receptor type 5(CCR5)の免疫免疫組織化学を施行したところ、思いがけずCCR5陽性症例は有意に予後良好であることが分かった。また、プラスミドを用いてMCF-7にCCR5を過剰発現させたうえでCCL5を添加して遊走能を評価したが、CCR5の強制発現による遊走能の亢進は確認できなかった。CCL5の受容体にはCCR5の他にCCR1、CCR3が知られており、これらががCCL5の腫瘍促進作用を媒介するものと考えられ、今後の更なる検討が必要である。
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