研究課題
近年、子宮頸部腺癌の中でも胃型形質を示す一群(胃型腺癌)が特に治療抵抗性で予後不良であることが明らかとなってきた。子宮頸部胃型腺癌の研究を推進するにあたっては、治療標的となりうる遺伝子異常の探索が重要となる。また、その発生機序を解明するためには分葉状頸管腺過形成(LEGH)といった胃型形質を示す前駆病変から腺癌にいたる過程で生じるゲノムレベルでの変化を突き止める必要がある。本研究ではまず、多数例の子宮頸部腺癌を対象として、病理組織学的検討、免疫組織化学的検討を行った。約65例の子宮頸部腺癌のうち、形態学的に胃型腺癌と判断されたものは約10例、胃型腺癌が疑われたものは約5例あった。免疫組織化学的に、CLDN18やHIK1083といった胃型マーカーの発現の確認を行い、最終的に11例を胃型腺癌に分類した。これらの胃型腺癌の4割にはLEGHの併存が確認された。CINの合併は認められず、また、p16のび漫性陽性所見が見られないことから、胃型腺癌はHPV非関連病変であることが示唆された。胃型腺癌に関しては腫瘍部及び併存するLEGHからDNA、RNAの抽出を進めてきた。今後、GNAS、KRAS、RNF43に代表される既知の粘液性腫瘍関連癌遺伝子の変異の有無、ALK等の腺癌関連融合遺伝子の有無を検討する。また、凍結検体を用いてエクソーム変異解析、またはRNA-seqを行うことで、子宮頸部胃型腺系病変に特異的なマーカーの確立、治療標的分子の絞り込み、及び癌化に関与する新規遺伝子異常の同定を目指す。
2: おおむね順調に進展している
子宮頸部胃型腺癌の臨床病理学的検討が完了し、組織形態、蛋白発現の観点から胃型腺癌が特異な一群を形成していることが明瞭となった。胃型腺癌に分類された症例に関しては、LEGHの併存の有無やステージ、予後といったデータの集積が完了し、順調にゲノム解析へと移行している。
子宮頸部胃型腺癌から抽出したDNA、RNAを用いて網羅的遺伝子解析を行い、背景遺伝子異常を探索する予定である。その際には通常型腺癌を対照として用い、胃型腺癌に特異的に生じている遺伝子変異、融合遺伝子、マイクロRNA異常の絞り込みを目指す。治療標的となりうる遺伝子異常を明らかにすることができれば理想的である。
網羅的遺伝子解析に関しては、症例をまとめて次年度に行う方針としたため。
主に子宮頸部胃型腺癌を対象としてエクソームシーケンスやRNA-seqといった次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析を行う予定であり、その試薬代、解析費用に充てる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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