研究課題
これまで、膵上皮内癌と浸潤癌のゲノムコピー数異常を網羅的に比較解析してきた。その結果、膵上皮内癌が浸潤癌に進展する過程で、第8番染色体短腕(8p)が欠失することを見出した。さらに、浸潤癌細胞では8pに存在するMAPキナーゼ脱リン酸化酵素DUSP4の発現が低下し、MAPキナーゼ活性が亢進していること、それによって癌細胞は足場非依存的生存能および浸潤能を獲得することを明らかにした。本年度は、DUSP4の発現低下に伴い活性化するMAPキナーゼが膵癌の治療標的となり得るか否かについて検討した。1.MAPキナーゼ阻害剤の有効性の検討(in vitro)MAPキナーゼパスウェイを遮断するMEK阻害剤を膵癌細胞株に添加すると、足場非依存的生存能および浸潤能が顕著に抑制された。阻害剤の非特異的作用の可能性を否定するためにMEKのドミナントネガティブ変異体を癌細胞に導入すると、阻害剤添加時と同様に足場非依存的生存能および浸潤能の低下が認められた。2.MAPキナーゼ阻害剤の有効性の検討(in vivo)免疫不全マウスを用いてヒト膵癌同所移植モデルを構築し、MEK阻害剤(治療群)または溶媒のみ(対照群)を継続的に投与して治療有効性を検証した。治療群は対照群に比べて原発腫瘍巣の大きさが顕著に抑制されていた。また、周囲組織への浸潤や遠隔転移も軽減していた。それらの結果として、治療群では癌細胞移植後の生存期間が有意に延長した。以上の結果から、8pの欠失によるDUSP4発現低下に伴って活性化されるMAPキナーゼは膵癌の有望な治療標的であることが明らかとなった。
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