膵癌組織から上皮内癌と浸潤癌を回収してゲノム異常を比較した結果、浸潤癌では8番染色体短腕(8p)が欠失していることを見出した。また8p欠失によって発現低下する遺伝子としてMAPキナーゼ脱リン酸化酵素DUSP4を同定した。DUSP4の導入は膵癌細胞のMAPキナーゼ活性を不活化して、浸潤能を減弱した。さらに、免疫不全マウスを用いたヒト膵癌移植モデルで、MAPキナーゼ阻害剤は腫瘍の縮小、転移の抑制、生存期間の延長をもたらした。以上の結果から、DUSP4は浸潤を制御する新規のがん抑制遺伝子であり、DUSP4欠失によって活性化するMAPキナーゼは膵癌の治療標的となり得ることが明らかとなった。
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