研究実績の概要 |
乳腺における神経内分泌癌は、ホルモン療法感受性を伴って予後良好とみなされてきたが、非特殊型浸潤癌と比較し、侵攻性の臨床経過を示すことを示してきた (Histopathology, 2014. ECP, 2014. USCAP, 2012等)。その一環として、癌性リンパ管症を伴う高分化型神経内分泌腫瘍を初めて報告した (Pathol Int, 2016)。 近年、我々はneedle implantationから再発した乳腺神経内分泌腫瘍を初めて報告したが(Virchows Arch, 2015. ECP, 2015. 日本内分泌病理学会トラベルグラント賞, 2015等)、同様の機序で再発を来たした良性の乳管内乳頭腫を分子病理学的観点から分析した(ECP, 2016)。 同じ乳癌特殊型である腺様嚢胞癌において、診断に有用な免疫組織化学パネルを考案し、真腔・偽腔の同定に高分子ケラチンのparadoxical patternが特異的であることを初めて報告した (Virchows Arch, 2016. USCAP, 2016)。 きわめて稀なlymphoepithelioma-like carcinomaの細胞病理学的特徴を分析し、その診断学的意義およびピットフォール、治療効果・予後予測因子として注目されているtumor-infiltrating lymphocytes (TIL) との密接な関連性について提示した (Cytopathology, 2017)。 その他、乳癌特殊型の中でもexceptionally rare types and variantsに関し、腫瘍病理鑑別診断アトラス‐乳癌‐第2版(文光堂,東京)において執筆した。さらに、新版 細胞診断学入門 - 臨床検査技師・細胞検査士をめざす人のために 第II部 各論「5 乳腺」(名古屋大学出版会,名古屋) を執筆した。
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今後の研究の推進方策 |
近年、我々は乳腺神経内分泌癌(B-NEC)の臨床的意義、生物学的特性を明確に示すとともに [Histopathology, 2013, 2014 & 2015(x2). Virchows Arch, 2015. Breast, 2012. Pathol Int, 2016. USCAP, 2011 & 2012. ECP, 2013, 2014 & 2015]、その pre-invasive counterpart として神経内分泌型非浸潤性乳管癌(NE-DCIS)を提唱し、疾患概念を確立した (Histopathology, 2008. Cytopathology, 2011. Pathol Int, 2011. Pathology, 2012. USCAP, 2010 等)。B-NEC の発生機構に関し、癌の異分化という考え方が一般的であるが、我々は“NE cell hyperplasia”の病態が関与しうることを発見し、初めて報告した (J Clin Pathol, 2012. USCAP, 2012. ECP, 2013 等)。今後は、1. 本病態と B-NEC のクローン的関連性を mitochondrial DNA sequence、CNV/LOH 解析から検討する、2. B-NEC の増殖・浸潤・転移に関与する遺伝子背景を分子病理学的に解明する、3. 分子標的治療、予後予測・治療効果予測に重要な遺伝子を cDNA/miRNA マイクロアレイ解析から抽出する、4. NE 腫瘍マーカーの診断的意義を検証する、5. 新分類を提唱することを主目的とし、研究を遂行していく。平行して、欧文論文の作成・投稿、国際・国内学会発表を積極的に行い、次世代放射線画像との共同を含め、発展研究の計画・立案を行う。
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