研究課題
術前化学療法を行った大腸癌肝転移の病理学的奏功率の判定は予後の推定に重要であるが,その評価方法には未だ議論があり,癌細胞の周囲にみられる間質の評価,その機序も理解されていない.近年,がん間質についての知見が相次ぎ,線維芽細胞は線維化を生じさせ,腫瘍随伴マクロファージを誘導しがんの微小環境に関与することが分かってきた.本研究は大腸癌肝転移巣の間質の特徴を,最近の知見であるがん間質の観点から明らかにすることを目的とする.現在の進捗状況を以下に示した.(1)大腸癌原発巣と転移巣における癌間質の比較・検討リンパ節転移陽性大腸癌35例,肝転移陽性大腸癌5例の外科切除材料を用い,原発巣とリンパ節転移巣,肝転移巣それぞれの癌間質線維芽細胞の発現を免疫組織学的に検討した.癌間質線維芽細胞マーカーのα-SMAは原発と転移いずれにも発現し,D2-40,S100A4は肝転移巣で低下し,CD10はリンパ節転移,肝転移巣で低下していた.大腸癌の原発巣と転移巣ではがん間質の微小環境が異なっている可能性が示唆された.(2)術前化学療法後大腸癌肝転移巣におけるCT morphologic appearanceと組織所見との対比術前化学療法が行われ外科的切除が行われた大腸癌肝転移47例について,造影CTによる形態学的評価(morphologic appearance)と組織像とを対比しその関連を検討した.造影CTの所見は組織学的な壊死の性質の違い,腫瘍壊死と梗塞型壊死の優位性,粘液の有無を反映しており,さらに壊死の性質を加味した腫瘍細胞の残存率が画像所見と良好に関連していることが示された.この内容は関連学会で発表し,現在英文誌へ投稿中である.
2: おおむね順調に進展している
症例の蓄積を進めるとともに,一方で一部の内容は研究成果として発表が可能となっている.
(1)大腸癌(原発,リンパ節転移,肝転移)の症例蓄積を行い,各々のがん間質の性質を明らかにする.(2)癌腫の組織型の相違ががん間質の相違に関連しているのかを明らかにするため,膵癌や皮膚がんにおける腺癌以外のがん間質について検討する.(3)大腸癌肝転移における術前化学療法の評価方法を画像所見,組織所見の両面から確立し,がん微小環境を含めた組織所見と画像所見との対比を行う.
予定より少額の誤差が生じたが,研究は予定通り行うことができた.
さらに症例や検討項目を増やし解析を進める.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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