研究課題
腎細胞癌の微小環境におけるVASH-1発現の意義[背景]本研究では腎細胞癌における真の血管新生と悪性度の相関を解明するため、近年発見された血管制御因子vasohibin-1 (VASH1)に着目した。[対象・方法]淡明細胞型腎細胞癌を対象にVASH1染色およびCD34染色を行い、VASH1密度および微小血管密度を測定した。VASH1発現は非腫瘍部腎組織の血管内皮細胞にはみられず、腫瘍部の血管内皮細胞の一部においてVASH1発現が確認された。同じ血管でもVASH1陽性の血管内皮細胞と陰性細胞が混在していた。一方、CD34は腫瘍部・非腫瘍部いずれの血管内皮細胞にも発現しており、CD34陽性の微小血管数を微小血管密度として測定した。[結果]非腫瘍部腎組織はVASH1染色陰性であったが、全毛細血管がCD34陽性であった。低異型度の淡明細胞型腎細胞癌では、VASH1陽性の血管内皮細胞が少数散在していた。高異型度の淡明細胞型腎細胞癌では、低異型度症例と比べVASH1陽性の血管内皮細胞が多数みられたが、CD34陽性の微小血管はむしろ減少していた。統計学的にVASH1密度は遠隔転移と正相関を示していた。VASH1低発現例は高発現例に比べ有意に再発率・死亡率が低い傾向にあった。一方、低微小血管密度症例は高微小血管密度症例に比べ有意に再発率・死亡率が高い傾向にあった。また、スニチニブ治療後組織ではVASH1陽性細胞が増加しているが、微小血管密度はむしろ減少していた。[結論]本研究では、血管内皮細胞におけるVASH1発現が遠隔転移や再発・予後不良因子であることを示し、VASH1が血管新生の真のバイオマーカーとなり得ることを明らかにした。また、VASH1はスニチニブ治療後腎細胞癌組織の血管内皮細胞に高発現しており、血管内皮細胞の分子標的治療への耐性に関与している可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
腎細胞癌の微小環境の研究をすすめ、血管制御因子であるVASH-1が悪性度および分子標的治療に対する体制にかかわっていることを報告した(Laboratory Investigation, 2017)。
腎細胞癌の微小環境における免疫チェックポイント分子(PD-1, PD-L1)やmTOR経路、癌幹細胞マーカ(CD44等)と分子標的治療に対する耐性の関連を中心に研究を遂行する予定である。
本年度に予定していた研究に関するデータ収集が予想よりも順調に進み、実験経費が予定よりも少なかった。また、論文掲載が確定している課題があるが、請求が次年度となったため、繰り越して使用することが適正であると判断した。
本年度は少ない経費で成果が順調に上がったため、次年度では当初よりも広範にわたる研究の実施が可能となった。そのため、掲載論文も増える予定であり、多数の論文掲載・学会発表を予定している。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
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巻: - ページ: -
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