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2016 年度 実施状況報告書

miRNAの局在に着目した膵癌発生・浸潤メカニズムの解明及び病理診断への応用

研究課題

研究課題/領域番号 16K08658
研究機関帝京大学

研究代表者

熊谷 有紗  帝京大学, 医学部, 助教 (50596963)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード浸潤性膵管癌 / 癌間質 / miR-21 / CD10 / podoplanin / periostin
研究実績の概要

本研究の目的は膵癌の実際の症例を用いて、癌細胞、間質それぞれにおけるmiRNA(miR-21,93,210)やタンパク質(α-SMA、CD10、podoplanin、periostin)発現の臨床病理学的意義を検討し、腫瘍の発生や分化、進展との関連を明らかにすることである。
浸潤性膵管癌107例のパラフィンブロックよりtissue microarray(TMA)を構築した。In situ hybridization(ISH)法によりmiR-21を検出し、癌細胞、間質それぞれのmiR-21発現の臨床病理学的意義について検討した。さらに、癌間質で発現が報告されているタンパク質(α-SMA、CD10、podoplanin、periostin)の発現意義についても検討した。
間質でのmiR-21高発現群は低発現群に比べ、腫瘍径が大きかったが(p<0.05)、腫瘍細胞でのmiR-21発現と臨床病理学的因子との関連は認められなかった。間質でのpodplanin及びperiostin高発現群はリンパ節転移との関連がみられ、また、periostinは脈管侵襲との有意な関連もみられた。間質CD10陽性群は有意に全生存期間が短いという解析結果であった。
今年度の検討により、腫瘍間質で発現するmiR-21、CD10、podplanin、periostinは,それぞれ腫瘍の進展に関連する臨床病理学的因子や患者の予後との関連が認められ、癌進展との関連が示唆された。また、miR-21は癌細胞より間質でのmiR-21が腫瘍の進展においてより重要な機能を持っていると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

膵癌症例のTMAの構築、miR-21に対するISH法、膵癌間質および活性型膵星細胞で発現が報告されているタンパク質(α-SMA、CD10、podoplanin、periostin)に対する免疫組織化学的染色を行った。膵癌細胞、癌間質に分けて評価し、それぞれでの臨床病理学的意義について解析した。
また、膵癌で解析したmiRNAやタンパク質の癌間質での発現意義について、より統合的に評価するために、胃、膀胱など多臓器腫瘍に応用し、発現局在とその意義についても検討を行った。
これまでにmiR-93に対するISH法の条件検討も終え、膵癌細胞および癌間質での発現意義について解析を進めている。

今後の研究の推進方策

前年度からの病理組織学的研究を継続する。膵癌株細胞(MIAPaca2、Panc-1、KP4)と膵星細胞(HPaRteC)を用いてmiR-21,93,210の機能解析を行い、細胞増殖や浸潤への影響について検討する。

1.間質におけるmiRNA発現と発癌の関連についての検討:TMAを構築した症例のうち、腫瘍内の中心部と辺縁部で特に発現状態の違いが顕著に現れた症例を中心に前癌病変と浸潤癌が含まれる切除検体を10例程度選ぶ。膵癌組織の切り出し図と病理組織像を基に腫瘍最大割面から切除断端、組織先端まで長軸方向に1-2㎝間隔で腫瘍の中心部と辺縁部のブロックを選ぶ。miRNA(miR-21,93,210)に対するISH法および活性型膵星細胞で発現が報告されているタンパク質の免疫組織化学的染色を行い、病変とそれぞれの分子との関連性について検討する。
2.細胞増殖、遊走能、浸潤能におけるmiR-21,93,210の機能についての検討:膵癌株細胞(MIAPaca2、Panc-1、KP4))に対し、Anti-miR-21,93,210、mimic-miR-21,93,210およびcontrol-miRのsiRNA導入を行い、それぞれの細胞の増殖能、遊走能、浸潤能について解析する。
3.膵星細胞におけるmiR-21,93,210発現の膵癌細胞増殖への影響についての検討:遺伝子導入後の膵星細胞(HPaRteC)のconditioned mediumを膵癌株細胞へ作用させた後、2.と同様に細胞増殖能、遊走能、浸潤能について解析する。

次年度使用額が生じた理由

ISH法および免疫組織化学的染色の条件検討が順調に進み、試薬、抗体、消耗品費用として計上していた物品費が節約可能となった。一方、Whole sectionを使った広範囲な検索については遅れが生じているため、検索に必要なプローブ、抗体および試薬購入は次年度に行う。また、現在準備中の論文投稿費用および英文校正費用として次年度に使用することとした。

次年度使用額の使用計画

次年度の研究遂行のためのプローブおよび抗体購入費用、膵癌株細胞および膵星細胞の購入費用、培養細胞を用いた実験のための試薬購入費用、現在準備中の論文投稿費用、英文校正費用に充てる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Clinical and pathological significance of myeloid differentiation factor 88 expression in human hepatocellular carcinoma tissues.2017

    • 著者名/発表者名
      Kinowaki K, Soejima Y, Kumagai A, Kondo F, Sano K, Fujii T, Kitagawa M, Fukusato T.
    • 雑誌名

      Pathology International

      巻: 67 ページ: 256-263

    • DOI

      10.1111/pin.12529

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Both cancerous miR-21 and stromal miR-21 in urothelial carcinoma are related to tumour progression.2016

    • 著者名/発表者名
      Ohno R, Uozaki H, Kikuchi Y, Kumagai A, Aso T, Watanabe M, Watabe S, Muto S, Yamaguchi R.
    • 雑誌名

      Histopathology

      巻: 69 ページ: 993-999

    • DOI

      10.1111/his.13032

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 尿路上皮癌間質におけるCD10、Periostin、Podoplaninの発現2017

    • 著者名/発表者名
      熊谷有紗、渡部朱織、渡邉雅人、菊池良直、宇於崎宏
    • 学会等名
      第106回日本病理学会総会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2017-04-28
  • [学会発表] 末梢型肝内胆管癌における幹細胞マーカー発現の免疫組織学的検討2017

    • 著者名/発表者名
      東海林琢男、近藤福雄、斎藤光次、笹島ゆう子、石田毅、大島康利、熊谷有紗、佐野圭二、宇於崎宏、福里利夫
    • 学会等名
      第106回日本病理学会総会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2017-04-28

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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