研究課題
応募者はこれまで、細胞間接着分子のひとつであるNectin3の発現が低下する膵癌は高悪性度であることを報告した。本研究ではこれまでの研究を発展させ、Nectin3の発現を制御するmicro RNA (miRNA)の発現と機能について検討することを計画した。まず、Nectin3の発現をノックダウンした膵癌細胞株と非ノックダウン細胞を対象として、miRNAマイクロアレイを行いNectin3に関連すると考えられるmiRNAを網羅的に解析した。その結果、非ノックダウン細胞と比較しNectin3ノックダウン細胞では30個のmiRNAで2倍以上の発現亢進がみられた。統計学的解析の結果、その内2個のmiRNAが非ノックダウン細胞よりもNectin3ノックダウン細胞で有意に発現亢進していることを同定した。次に、浸潤性膵管癌および前癌病変と考えられるpancreatic intraepithelial neoplasia (PanIN)の切除検体を対象として、網羅的解析で同定したNectin3関連miRNAの発現をin situ hybridizationにより解析した。正常膵管にNectin3関連miRNAの発現は認められなかった。Nectin3関連miRNAは、low-grade PanIN、high-grade PanIN、浸潤性膵管癌となるに従い発現が段階的に上昇した。また、Nectin3関連miRNA陽性症例は、有意に予後不良であった。以上の結果からは、Nectin3関連miRNAが膵管癌の発癌や悪性化に関与することが示唆された。しかしながら、ゲムシタビンを添加したNectin3関連miRNA導入膵癌細胞とコントロール細胞では細胞生存率に有意差はなかった。
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