研究課題
近年、高齢者乳癌は急増しているが、高齢者乳癌についての系統立った研究は少なく、予後や薬剤の副作用については不明な点が多い。高齢者乳癌では、患者背景の多様さに加え、特殊型が多いことも事態を複雑化させている。本研究ではこれらの点を考慮し、(i) 高齢者における内分泌療法の副作用の特徴解明、(ii) 高齢者triple negative (TN) 乳癌の特徴解明、(iii) 高齢乳癌患者おけるホルモン代謝動態の解明、の3つの方向からアプローチを加えた。(i) 高齢者における内分泌療法の副作用の特徴解明:自覚的副作用のアンケート調査の結果、70歳以上では、発汗、指関節症状、膝・肩関節症状、手足のしびれ、易疲労感、だるさ、物忘れ等の症状が、selective estrogen receptor modulator (SERM) で aromatase inhibitor (AI) よりも有意に少なかった。一方、70歳未満で同様に有意差があったのは指関節症状のみだった。高齢乳癌患者では、多くの症状の出現率・程度が、SERMでAIよりも有意に低く、少なくともQOL維持の観点からはSERMが有利な可能性があることがわかった。(ii) 高齢者TN乳癌の特徴解明:5施設共同で、75歳以上の高齢女性および対照群の閉経後女性(55-64歳)のTN乳癌組織を収集し、組織型、免疫組織化学的特徴などを調べたところ、高齢者にはアポクリン分化型癌や化生癌が多く、androgen receptor陽性率が高いことがわかった。(iii) 高齢乳癌患者おけるホルモン代謝動態の解明:75歳以上の高齢女性から得られた乳癌組織、非癌部乳腺組織、血清についてエストロゲン濃度を測定したところ、癌のタイプごとに代謝動態が異なることが示唆された。
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Pathology International
巻: e-pub ページ: e-pub
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