研究課題
本研究は、胃に発生する腺癌の中で、とりわけ組織学的不均一性を示すとされる「中分化腺癌」を対象とした後方視的研究である。病理組織検体の病理学的・分子生物学的解析結果に基づく癌の層別化を試み、転移・予後との関係を検討してその臨床的意義を明らかにすることを目的としている。当該年度は、臨床病理学的項目の整理および、病理組織学的評価(腫瘍径、壁深達度、組織分化度、粘膜内と粘膜下層の組織分化度の変化の有無、潰瘍合併の有無、脈管侵襲、浸潤様式、リンパ節転移等)、ならびに免疫組織化学的検討結果に基づく亜型分類と臨床的事項との関係について検討を行った。特に、The Cancer Genome Atlas(TCGA)分類において一亜型に位置づけられているEBV-CIMP(以下EBV)群について解析を行った。EBV群は、検討症例のうち7.9%を占め、男性に多く、胃上部に多く発生すること、隆起性病変が多いこと、潰瘍合併の頻度が低いこと、粘膜下層浸潤の程度がより深いこと、脈管侵襲の頻度が低いことなどが確認された。さらにはリンパ節転移4.2%であることが示され、非EBV群と有意な差異があることが分かった。また脈管侵襲陰性のEBV群50例においてはリンパ節転移陽性群は存在しなかった。従って脈管侵襲陰性のEBV群については、他病理所見の如何に関わらずリンパ節転移の危険性が低く、内視鏡治療の適応群になりうると考えられた。上記知見をまとめ、英文論文を作成、投稿し、受理された(Osumi H, Kawachi H et al. J Gastroenterol 2019)。
3: やや遅れている
症例の解析、免疫組織化学的検討は概ね予定通り進んでいるが、論文作成が一部の成果についてのみにとどまり、残りの成果について解析・論文化が終了していない。
既に論文化したEBV群の知見のほかに得られた結果について、解析を深めて有意義な結果については論文化する。
当該年度中に、対象症例の解析をすべて終了することが難しい状況となった。また研究結果の一部について既に論文を作成し、研究結果の論文化についてはさらに進める予定であったが、当該年度中に終了させることが困難な状況となったことから、補助事業期間を延長する旨、申請を行った。研究期間を延長した関係で、次年度使用額が生じた。次年度においては解析をすべて終了させるため、解析用のコンピューター・ソフトウエア関連費用および論文作成・投稿用の英文校正・投稿費用などに充当する予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
J Gastroenterol
巻: - ページ: -
10.1007/s00535-019-01562-0
Gastric Cancer
10.1007/s10120-019-00963-7