研究実績の概要 |
本研究は、胃に発生する腺癌の中で、とりわけ組織学的不均一性を示すとされる「中分化腺癌」を対象とした後方視的研究である。病理組織検体の病理学的・分子生物学的解析結果に基づく癌の層別化を試み、転移・予後との関係を検討してその臨床的意義を明らかにすることを目的としている。 当該年度は、前年度に引き続き、臨床病理学的項目の整理および、病理組織学的評価(腫瘍径、壁深達度、組織分化度、粘膜内と粘膜下層の組織分化度の変化の有無、潰瘍合併の有無、脈管侵襲、浸潤様式、リンパ節転移等)、ならびに免疫組織化学的検討結果に基づく亜型分類と臨床的事項との関係について検討を行った。また、免疫染色標本の一部をバーチャルスライド化し、評価効率の向上を試みた。解析可能であった症例は894例であったが、高分化~中分化腺癌と低分化腺癌の成分の双方を含む胃癌(以下混合型)を抽出し検討した。混合型は400例と全体の44.7%を占めていた。The Cancer Genome Atlas (TCGA)分類との対応では、EBV-CIMP群71例のうちで混合型は42例(73%)、MSI群67例のうちで混合型は42例(67%)を占め、両者において混合型は主たる組織型であることがわかった。また、TCGAとは異なるが初年度に主に解析を行った横這型癌(crawling-type adenocarcinoma, CTAC)に注目すると、CTAC 52例中、混合型の占める割合は45例(87%)ときわめて高かった。リンパ節転移については、混合型のリンパ節転移率は23.5%(400例中94例)と他の純粋型(494例中92例、18.6%)に比して高い傾向にあった。特に粘膜内と粘膜下層の双方に混合組織型を認める場合のリンパ節転移率は32.1%とより高く、リンパ節転移の点で悪性度の高い群として抽出された。
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