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2017 年度 実施状況報告書

高齢者胃癌の病理学的特徴とその発生に関連する遺伝子変化の解析

研究課題

研究課題/領域番号 16K08664
研究機関地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)

研究代表者

新井 富生  地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (20232019)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード胃癌 / 高齢者 / マイクロサテライト不安定性 / KRAS遺伝子 / BRAF遺伝子 / CA19-9
研究実績の概要

高齢者ではマイクロサテライト不安定性を示す胃癌が増加し、85歳以上の超高齢者では約1/3の胃癌がマイクロサテライト不安定性を示すことを明らかにした。また、胃癌ではKRAS遺伝子変異(3.5%)、BRAF遺伝子変異(0.43%)が低率であることも明らかにした。本年度の研究では、415例(男性222例、女性193例、年齢中央値78歳、分布51~96歳)の胃癌患者の460病変を用いて、KRAS・BRAF遺伝子変異とマイクロサテライト不安定性との関連について詳細に検討し、他の臨床病理学的事項と統計学的に解析した。その結果、KRAS遺伝子変異を示す16例中G12D型が8例、G12V型が1例、G13D型が10例であった。2例ではコドン12、13の両者に変異がみられた。BRAF遺伝子変異のみられた2例はともに、KRAS遺伝子変異もみられた。マイクロサテライト不安定性は81例(17%)に認められ、KRAS遺伝子変異と有意な関連を認めた(p<0.001)。胃癌ではKRAS・BRAF遺伝子ともに変異率が低いので、共同研究により1000例を超える症例を集積し、さらに検討する予定である。これらの結果から、大腸癌と異なりBRAF遺伝子変異はマイクロサテライト不安定性を示す胃癌の発生への関与は低いものと結論づけられる。近年、消化管癌においてもマイクロサテライト不安定性を示す癌が免疫チェックポイント阻害剤の適応になる可能性が示唆されているが、大腸癌と発生機序の異なる胃癌においては、適応になるか否かを慎重に検討する必要がある。また、本年度はCA19-9産生胃癌の臨床病理像について検討を始めた。CA19-9産生胃癌が脳血栓塞栓、非細菌性血栓性心内膜炎を併発した剖検例を詳細に検討し、症例報告として論文発表したが、現在剖検例を用いてCA19-9産生胃癌と合併症との関連について検討している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

高齢者胃癌の遺伝子変異については解析の精度に問題があり、やや遅れているのが実状である。しかし、CA19-9産生胃癌についての研究は症例報告することができ、313剖検例の基礎データ収集を終了し、免疫組織学的に検討を進める準備を整えることができた。

今後の研究の推進方策

胃癌では、KRAS遺伝子及びBRAF遺伝子の変異率が低いので、国内外の共同研究者に呼びかけ、約1200例の胃癌の症例を集積して、さらに検討を加える。今後免疫チェックポイント阻害剤の適応の可能性も想定されるので、マイクロサテライト不安定性とKRAS遺伝子変異の関連についても検討する。
マイクロサテライト不安定性を高率に示す充実型低分化腺癌については、約100症例を収集し、臨床病理学的にさらに検討する。
CA19-9産生胃癌については、血清CA19-9値、免疫組織学的反応、組織型、合併症も含む臨床病理像を明らかにする予定である。

次年度使用額が生じた理由

平成29年度は前年度得られたデータをまとめるとともに、次年度の準備に時間をあてたので、支出が予定より少なめであった。平成30年度においては、大きな2つのプロジェクトを実施し、データをまとめ論文発表までを予定している。また、国際学会での発表も予定している。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)

  • [国際共同研究] Maastricht University(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      Maastricht University
  • [国際共同研究] University of Leeds(United Kingdom)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of Leeds
  • [国際共同研究] Duke-NUS Medical School(Singapore)

    • 国名
      シンガポール
    • 外国機関名
      Duke-NUS Medical School
  • [雑誌論文] Frequent Coamplification of Receptor Tyrosine Kinase and Downstream Signaling Genes in Japanese Primary Gastric Cancer and Conversion in Matched Lymph Node Metastasis2018

    • 著者名/発表者名
      Silva ANS, Coffa J, Menon, HewittLC, Das K, Miyagi Y, Bottomley D, Slaney H, Aoyama T, Mueller W, Arai T, Tan IB, Deng N, Chan XB, Tan P, Tsuburaya A, Sakamaki K, Hayden JD, Yoshikawa T, Zondervan I, Savola S, Grabsch HI
    • 雑誌名

      Annals of Surgery

      巻: 267 ページ: 114~121

    • DOI

      10.1097/SLA.0000000000002042

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Carbohydrate Antigen 19-9-Positive Gastric Adenocarcinoma: Autopsy Findings and Review of the Literature2017

    • 著者名/発表者名
      Wang Tan、Matsuda Yoko、Seki Atsuko、Nonaka Keisuke、Kakizaki Mototsune、Kaneda Daita、Takahashi-Fujigasaki Junko、Murayama Shigeo、Arai Tomio
    • 雑誌名

      Case Reports in Gastroenterology

      巻: 11 ページ: 545~553

    • DOI

      10.1159/000479223

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Association of Macrophage Capping Protein (CAPG) Arg335His Polymorphism and Cancer Susceptibility in the Elderly Japanese2017

    • 著者名/発表者名
      Dechamethakun Sariya、Sato Noriko、Ikeda Shinobu、Sawabe Motoji、Mori Seijiro、Yamada Yoshiji、Tanaka Masashi、Muramatsu Masaaki、Arai Tomio
    • 雑誌名

      Journal of Gerontology & Geriatric Research

      巻: 06 ページ: 417

    • DOI

      10.4172/2167-7182.1000417

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Pathological diagnosis of adenocarcinoma of the esophagogastric junction2018

    • 著者名/発表者名
      Arai T
    • 学会等名
      第90回日本胃癌学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] Mutaion of KRAS and BRAF genes and microsatellite status in gastric cancer in the elderly2018

    • 著者名/発表者名
      Wang T, Matsuda Y, Seki A, Nonaka K, Kakizaki M, Aida J, Takubo K, Ishiwata T, Grabsch HI, Arai T
    • 学会等名
      第90回日本胃癌学会総会
  • [学会発表] 大腸髄様癌とそれに関連するマイクロサテライト不安定性を示す大腸癌の病理学的特徴2017

    • 著者名/発表者名
      新井冨生,松田陽子,関 敦子,相田順子,田久保海誉.石渡俊行
    • 学会等名
      第63回日本病理学会秋期特別総会
  • [学会発表] Pathological diagnosis of esophageal adenocarcinoma (EAC): The Japanese viewpoint2017

    • 著者名/発表者名
      新井冨生
    • 学会等名
      第71回日本食道学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 臓器別シンポジウム13「それぞれの癌」:診断・治療の現状と展望‐食道‐ 食道扁平上皮癌・腺癌の病理診断:最近の話題2017

    • 著者名/発表者名
      新井冨生,大倉康男,八尾隆史,根本哲生,河内 洋,眞能正幸,向所賢一,渡邉 玄,柳澤昭夫
    • 学会等名
      第55回日本癌治療学会学術集会
    • 招待講演

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-22  

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