研究課題
IgG4関連疾患 (IgG4-RD)では、健常人と比べ発がんリスクが約3.5倍高いことが報告されており、我々も眼窩領域のIgG4-RDを背景にMALTリンパ腫が発症する可能性について報告してきた。IgG4-RDでは、IL-4、IL-10、TGFbなどが過剰発現しており、それらが発がんに関与しているのではないかと考えられる。Activation-induced cytidine deaminase (AID) はB細胞において抗体のクラススイッチを誘導する蛋白であり、近年ではc-myc等の癌原遺伝子に対してもAIDの変異原性が認められ、発がんへの関与も示唆されている。さらに、AIDはIL-4、IL-10、TGFbなどにより活性化することが知られており、AIDによる発がんの可能性を疑い、IgG4-RDとAID発現の関連について検討した。研究方法:IgG4-RD(14例)、唾石症(13例)、正常顎下腺(14例)、のパラフィン包埋切片(FFPE)を対象とした。自動免疫染色装置 BondⅢを使用し、anti-AID免疫染色を行い、染色結果の評価を行った。さらに対象症例のFFPEよりRNAを抽出し、realtime-PCRによりAIDの定量的解析を行った。研究結果:realtime-PCR解析の結果、唾石症群や正常群と比較して、IgG4-RD群では有意にAIDが高発現していることが明らかとなった。また、免疫染色によりIgG4-RDでは胚中心外においてもAIDが強発現していることが確認できた。これによって他の遺伝子のmutationが引き起こされ、発がんのリスクを高めている可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
今回の研究によりIgG4-RDにおいてAIDが過剰発現し、胚中心外においても過剰産生されていることが明らかとなった。先に述べたようにIgG4-RDでは、IL-4、IL-10、TGFbなどのサイトカインが過剰産生されており、これらサイトカインはB細胞のクラススイッチに関与することが知られている。これらのサイトカインによってAIDが胚中心外にも過剰発現し、これによって他の遺伝子のmutationが引き起こされ、発がんのリスクを高めている可能性が示唆された。
今後は他臓器IgG4関連疾患においてAIDの過剰発現が起こっているか否か確認し、さらに眼窩領域のIgG4陽性細胞の浸潤を伴うMALTリンパ腫、IgG4陽性細胞を伴わないMALTリンパ腫およびIgG4関連疾患においてAIDの発現解析を行う予定である。これらの成果は、本研究期間内には然るべき学術英文誌に報告を行うことを考えている。
当初予定していたよりもスムーズに研究が進行し、そのおかげで余計な試薬費等を節約することが出来たため。
当初は2年程度かかると見込まれていた研究内容であったが、約1年近く予定よりも成果を出すことが出来た。そのため次のステップで予定していた、この成果を応用した腫瘍性病変でのAID発がんの解析に使用する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (3件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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