研究課題/領域番号 |
16K08667
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡 剛史 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (50160651)
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研究分担者 |
大内田 守 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (80213635)
岡田 康志 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (50272430)
吉野 正 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70183704)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HTLV-1 / ATL / DNAメチル化 / 1細胞解析 / ライブセルイメージング |
研究実績の概要 |
成人T 細胞白血病・リンパ腫(ATL) はとくに病期の進んだ症例の予後は大変不良であり、このような難治性リンパ腫・白血病をどのように扱うかは焦眉の課題となってきている。ATLはHTLV-I を原因ウイルスとする疾患であるが現在のところ有効な治療法が確立されていない。本研究では、患者検体、培養細胞、動物モデル等の様々な実験系によりATL におけるエピジェネテイック異常の発症機構について包括的網羅的解析法を駆使しながら様々な角度から総合的且つ詳細に解析した。とくに新たに開発したメチル化DNA 結合蛋白MBD-EGFP によるDNA メチル化ライブイメージング法を用いて内部環境及び外部環境の変化に応答するDNA メチル化の動的変化をライブ解析した。我々はHTLV-I tax 遺伝子ON の後、一過的なグローバルDNA 脱メチル化誘導の後、引き続き異常DNA メチル化が起こることを確認し,多数のhyper-methylation focus が新たに形成されていることを観察した。更にHTLV-I tax 遺伝子発現ON にした後、細胞の DNA メチル化レベルの変動パターンの経時的変化を追跡し、異常DNA メチル化がおこるのに必要とされる時間依存性をさらに一細胞レベルで詳細に解析した。FCM 解析で観察されるグローバルDNA メチル化レベルの変動解析と平行して網羅的遺伝子発現解析を行い、HTLV-1 Tax遺伝子の標的遺伝子群のDNAメチル化と遺伝子発現の解析に成功し標的遺伝子群のDNAメチル化と遺伝子発現のダイナミックな変動が捕らえられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フローサイトメトリ(FACS)を用いた細胞周期解析方法と細胞周期変動に応じたDNAメチル化レベルの変動をEGFP蛍光検出により同時計測に成功した。我々は既に予備実験よりHTLV-I tax遺伝子ONの後、一過的なグローバルDNA脱メチル化誘導の後、引き続き異常DNAメチル化が起こることを確認し,多数のhyper-methylation focusが新たに形成されていることを観察している。更にHTLV-Itax遺伝子発現ONにした後、細胞の DNAメチル化レベルの変動パターンの経時的変化を追跡し、異常DNAメチル化がおこるのに必要とされる時間依存性をさらに詳細に解析した。FACS解析で観察されるグローバルDNAメチル化レベルの変動解析と平行して共焦点レーザー顕微鏡及び超高解像度STED顕微鏡によるメチル化DNAのhyper-methylation foci,Tax蛋白質の時間・空間局在分布変動を1細胞レベルで検討することにより新たにDNA methylationが起こっている現場でどのようなことが起こっているのか詳細に解析する研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後フローサイトメトリー解析で観察されるグローバルDNA メチル化レベルの変動解析と平行して共焦点レーザー顕微鏡及び超高解像度STED 顕微鏡によるメチル化DNA のhyper-methylation foci,Tax 蛋白質, DNMT1,3a,3b などDNA メチル化蛋白,Tet1,2,3 等DNA 脱メチル化蛋白、ポリコーム遺伝子群蛋白発現の時間・空間局在分布変動を1細胞レベルで、新たにDNAmethylation が起こっている現場でどのようなことが起こっているのか詳細に解析を行う。また白血病細胞の長期ライブイメージングによるエピゲノム状態の経時変化の定量化を行う。更に次世代シーケンス技術を用いることにより、DNAメチル化のBisulfite sequencing,及びRNA sequencingによりどのようなターゲット遺伝子がどのようなタイミングで時間依存的にDNAメチル化変動・発現変動を起こしているか、そのような現象に記憶が観察されるか、またそれがどのように細胞の生理学的、病理学的変化に結びついているか詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:今年度の実験においては消耗品の使用をすこし節約できたため次年度使用額が生じた。 使用計画:次年度使用額は翌年度分と本年度繰り越し分を合わせた消耗品の支出に使用する予定である。
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