研究実績の概要 |
急性心筋梗塞の病態は冠動脈の血栓性閉塞であり、経皮的冠動脈形成術(PCI)などによって閉塞血管の血行再建術が行われる。しかし閉塞部位が解除されたにもかかわらず心筋に十分な血液灌流が得られない、微小循環障害(no-reflow現象)が生じることがある。これによる慢性期心機能の低下や生命予後の悪化が報告されており、閉塞血管の再疎通のみならず心筋還流も改善させる治療が望まれる。No-reflow現象の病理像は毛細血管閉塞である(Kloner, JCI, 1974)が、引き金となる分子機序は不明である。 好中球は自らの核酸と細胞内蛋白の複合体を放出することで外来病原体を捕獲する機序:neutrophil extracellular traps (NETs)も持ち合わせている(Brinkmann, 2004, Science)。NETsは強い細胞毒性を有しており敗血症時の血管内皮細胞障害の一因とされている。血栓形成を主たる病態とする急性心筋梗塞においてもNETsが放出され内皮障害に関与している可能性がある。期間を通して申請者はNo-reflowに陥った心筋組織におけるNETsの存在証明を行った。急性心筋梗塞のためお亡くなりになった患者様の剖検心において病変部におけるNETsを免疫染色し病理学的に証明した。最終年度は上記人体病理に関する論文を投稿準備している。
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