研究実績の概要 |
ALKは未分化大細胞リンパ腫や肺腺癌などで融合遺伝子が存在し、診断のマーカーや分子標的治療のターゲットとなっている。炎症性筋線維芽細胞腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor; IMT)の約50%はALK融合遺伝子を有していることが知られていた。ROS1はALKと構造的に類似した受容体チロシンキナーゼで、肺癌の5%未満にROS1融合遺伝子が存在することが知られており、それらのキナーゼ阻害薬が治療に用いられている。NTRK3(ETV6-NTRK3)は甲状腺癌(乳頭癌)、唾液腺癌や乳癌(分泌癌)で融合遺伝子を形成しており、ALKやROS1同様、過剰発現しているキメラ蛋白に対する免疫染色、FISHやRT-PCRを用いた融合遺伝子の検出が診断並びに治療方針の決定に役立つ。我々の研究では、IMTにおいて、ALK, ROS1, NTRK3はそれぞれ, 61.1%, 5.6%, 5.6%ににおいて過剰発現(免疫染色陽性)していることを見出した。これらの大部分は融合遺伝子の存在はFISHやRT-PCRを用いて裏付けられた。2例においてFISH法にてETV6遺伝子再構成が同定され、1例ではRT-PCRにてETV6-NTRK3融合遺伝子が同定されたが、もう一例では通常のRT-PCR法では融合相手遺伝子は同定できなかった。しかし、後者はNTRK3免疫染色陽性であったことから、これまでの報告とは異なるタイプの融合遺伝子亜型が存在することが疑われ、次世代シークエンスなどを用いて詳細を解析中である。
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