研究課題/領域番号 |
16K08673
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
百瀬 修二 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (70360344)
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研究分担者 |
田丸 淳一 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (30188429)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん / リンパ腫 / 性差 / DDX3X |
研究実績の概要 |
われわれはB細胞性リンパ腫の遺伝子変異探索過程において、男性限局性に変異を認める遺伝子DDX3Xを新たに見出した。とりわけBurkittリンパ腫など、一部の悪性リンパ腫においては疫学的に男性優位に発生するが、その原因は不明である。本研究は、われわれが見出した性差に関与すると考えられるDDX3X遺伝子を、リンパ腫発症にかかわる分子メカニズムとともに、分子疫学的観点からの解明を目指す。 平成28年度において、われわれはDDX3Xに変異を有するB細胞リンパ腫細胞株に野生型のDDX3Xを導入することで、AKT/PKBのリン酸化(Ser473)の低下ならびに増殖抑制効果があるという結果を得た。このことはDDX3Xが“がん抑制遺伝子”として機能することを示すものと考える。またDDX3Xの遺伝子解析に関しては、現在70例のBurkittリンパ腫症例の解析を終えた。検体はホルマリン固定パラフィン包埋標本で、これらからDNAを抽出し、サンガーシークエンスにて解析を行った。結果、男性にのみ変異を確認し、女性には見出していない。この結果はDDX3Xの変異が男性に限局して(優位に)、引き続き症例を増やし、解析を行っていく予定である。 DDX3Xの遺伝子発現の制御機構に関し、遺伝子変異の他にメチル化の関与について検討したが、DDX3X野生型の培養細胞株に5-Aza-2’-deoxycytidineを添加し検討を行った。結果、DDX3Xの発現の上昇などはみられず、検索した範囲内ではメチル化の影響は認められなかった。 さらに、コンディショナルノックアウトマウス作製のためCrisper-Cas9システムを用いた遺伝子改変を行った。目的の領域を切断し、loxP配列の導入を試み、5’側領域にloxP配列の導入に成功した。PCRおよびサンガーシークエンスにて確認を行った。現在、引き続き3’側への導入を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標の一つであるコンディショナルノックアウトマウス作製に関し、Crisper-Cas9システムを用いた系でloxP配列の導入に成功した結果は大きく、この系にてコンディショナルノックアウトマウスの作製が可能性であることを示している。引き続き、もう一方の部位にloxPを入れるべく研究を遂行していく。 またDDX3Xががん抑制遺伝子として機能する作業仮説に対し、DDX3Xに変異を有するB細胞リンパ腫細胞株への野生型DDX3Xの導入でAKTのリン酸化の低下と増殖抑制効果を見出したことで一定の結論に近づいたものと考えている。 以上から全体としては、おおむね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上述のごとく、コンディショナルノックアウトマウス作製に関し、引き続きloxP配列の挿入を行ない、でき次第DDX3Xの個体レベルでの機能解析を開始する。 またDDX3Xががん抑制遺伝子として機能することが示唆されたので、今後cDNAマイクロアレイなど、種々の解析にて増殖抑制機構などの解明を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コンディショナルノックアウトマウス作製のための費用および掛け合わせのためのトランスジェニックマウス用の費用が平成28年度は支出が抑制されたため
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次年度使用額の使用計画 |
コンディショナルノックアウトマウスが樹立され次第、繰り越しされた研究費をトランスジェニックマウスの購入のために充当する予定である。
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