研究課題
われわれはB細胞性リンパ腫の遺伝子変異探索過程において、男性限局性に変異を認める遺伝子DDX3Xを出した。とりわけバーキットリンパ腫など、一部の悪性リンパ腫においては疫学的に男性優位に発生するが、その原因は不明である。本研究は、われわれが見出したがんの性差に関与すると考えられるDDX3X遺伝子を、リンパ腫発症にかかわる分子メカニズムとともに、分子疫学的観点からの解明を目指すものである。平成29年度においてわれわれはDDX3Xに変異を有するB細胞性リンパ腫細胞株に野生型のDDX3Xを導入することで、AKT/PKBのリン酸化(Ser473)の低下ならびに増殖抑制効果があることを確認した。このことは、DDX3Xががん抑制遺伝子としての機能を有することを示すものと考える。また現在、ホルマリン固定パラフィンブロックからの核酸を用いたDDX3Xの遺伝子解析のためのプラーマーセットの設計ならびにValidationを終え、次世代型シークエンサーでの多検体解析が可能となった。現在、高悪性度B細胞リンパ腫と診断されたFFPE検体からDNAを抽出し、さらに検体数を増やし、解析を進めている。さらに、コンディショナルノックアウトマウス作製のために、Crispr-Cas9システムを用いた遺伝子改変をDdx3x遺伝子内で行い、初年度Ddx3xの5’側領域へのloxP配列の導入に成功したのに続き、平成29年度は3’側にloxPの導入に成功した。現在、F1樹立の確認とともに種々のリンパ腫モデル樹立のための交配を開始している。
2: おおむね順調に進展している
多検体スクリーニングシステムの確立ができたことからFFPEを含めた多検体でのDDX3Xの遺伝子解析が可能となった。さらにDdx3xノックインマウスを樹立できたことから、個体レベルでのDdx3xの機能解析ならびに腫瘍発生メカニズムが進むものと期待される。
DDX3XのBurkittリンパ腫での遺伝子異常をさらに進めるとともに、Ddx3xノックインマウスを用いたDdx3xのB cellでの機能、腫瘍発生機構の解明を進めていきたい。
一部、マウスの購入手続き等の遅延により、繰り越し金が生じた。Ddx3xノックインマウスは現在中で、H30年度には適宜目的とするCre trangenic miceを購入し、交配を開始し、表現型の観察を行う。したがって、繰り越し金は当初の予定通り実験動物費用として使用される予定である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)
Leuk Lymphoma
巻: Sep.10 ページ: 1-10
10.1080/10428194.2017.1369073
J Clin Exp Hematop
巻: 56 ページ: 165-169
10.3960/jslrt.56.165
International Journal of Oncology
巻: 51 ページ: 579-586
10.3892/ijo.2017.4031
血液内科
巻: 75 ページ: 755-759