研究実績の概要 |
本邦における癌死原因一位を占める肺癌では、EGFR, KRAS, NRAS, HER2, BRAF, MAP2K1遺伝子変異の他、ALK, RET, ROS融合遺伝子が、肺腺癌の発生・進展に直接的に重要な役割を果たすドライバー遺伝子として分子治療の標的に成り得ると報告されているが、全肺腺癌の中でドライバー遺伝子変異が占める割合は64%程度であり(Kris MG, et al. JAMA.2014)、未だ30%以上の肺腺癌においてドライバー遺伝子及び分子治療標的が不明である。本研究では、肺腺癌においてRASA1遺伝子変異の大部分がtruncating mutationであり、さらにEGFR, KRAS, HER2といったドライバー遺伝子変異と相互排他的な傾向を示していることから(TCGA, http://cancergenome.nih.gov)、RASA1遺伝子異常は肺癌の発生・進展に重要な役割を果たしている可能性があると考え、肺癌におけるRASA1遺伝子変異の機能解析を行い、以下の結果を得た。1) RASA1遺伝子ノックダウン細胞ではMEK, ERK, AKTのリン酸化が亢進する。2)RASA1タンパクは肺癌細胞株では通常発現しており、EPLC272H, RERFLCKJ といったRASA1遺伝子変異を有する肺癌細胞株のみで発現が低下している。3) RASA1遺伝子変異を有するヒト肺癌細胞株では、Trametinibに感受性を示した。
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