研究実績の概要 |
肺癌では多数のドライバー遺伝子異常が同定され, 個別化治療の拡大が試みられている. TCGAのデータセットでは、RASA1の遺伝子変異は2.2%と報告されており、1000例中10~30症例程度RASA1遺伝子変異を有する症例を同定できると仮定していたが, RASA1遺伝子変異陽性の患者は同定されなかった。本検討で得られた肺腺癌のドライバー遺伝子異常情報と臨床病理学的特徴の関連を評価した. 順天堂大学附属順天堂医院で切除された肺腺癌996例に対してPCR clump法によるEGFR, KRAS変異検索, NanoString nCounterによる融合遺伝子検索及びこれら解析結果陰性非喫煙者121例に対してwhole exon及びRNA sequenceを施行. WHOの基準に基づき病理組織学的検討を施行.679例(68.2%)でドライバー遺伝子異常: EGFR (46%), KRAS (12%), ERBB2 (1.6%), BRAF (1.5%), MAP2K1 (7%)遺伝子変異, MET exon14 skipping (METex14) (1.3%), ALK (2%), RET (1%), ROS1 (0.9%)融合遺伝子を同定した. これら遺伝子異常は各組織亜型に広く分布していたが, BRAF (56%), MAP2K1 (57%)陽性例は上皮内癌に多くみられた. ERBB2変異は若年者に多く, 33%の症例で微小乳頭状構造を認めた. METex14は高齢者に多く, 38%の症例でpleomorphic cellsの混在を認めた. EGFR (L858R) compound mutation陽性39例とL858R単独156例との間に組織学的差異は認めなかった. ERBB2, METex14, BRAF, MAP2K1陽性肺腺癌は各々特徴的な臨床病理像を呈していた.
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