(1) ヒト卵巣奇形腫において、gradeの進展は未熟成分の多さを反映しているが、本研究にて、gradeが進展するほど、奇形腫内血管のh-caldesmon/α-SMA比率は低下することが判明した。したがって、h-caldesmon/α-SMA比率は血管平滑筋の成熟の指標として有用と考えられることの傍証が得られた。 (2) ヒト剖検例において、急性心筋梗塞が強く疑われた症例では冠動脈のh-caldesmon/α-SMA比率が低かったため、冠動脈プラーク破裂による急性心筋梗塞が生じたと考えられた。一方、心臓外の原因がむしろ疑われた症例では、h-caldesmon/α-SMA比率が高かったため、急性心筋梗塞を除外出来、その後の検索にて肺脂肪塞栓症を死因として見出すことが出来た。これらより、「動脈硬化性プラークの破綻部位では内膜平滑筋のh-caldesmon発現が低下」していることの逆すなわち「内膜平滑筋のh-caldesmon発現が低下していると動脈硬化性プラークが破綻した」も真である可能性が示唆された。 (3) 高安大動脈炎の検体9例に関して、急性期の3例は、慢性期および瘢痕期の6例に比してh-caldesmon/α-SMA比率は有意に低かった。これにより、内膜平滑筋の成熟度は先天性に決まっているというより、時間経過によって変動することが示唆された。 (4) SPCH症例7例全てにおいて、病変部血管はα-SMA陽性であり、これらは血管内皮とほぼ区別困難な領域に陽性であったため、血管周皮細胞に陽性と判定された。背景の肺毛細血管はα-SMA陰性であったため、SPCHの範囲確定にα-SMA免疫染色が有用であったと同時に、SPCHは反応性の毛細血管増生ではなく真の腫瘍と考える根拠となった。
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