研究実績の概要 |
原発性胸膜腫瘍の石灰化線維性腫瘍の検索を試みたが、細胞数が少なく検索が困難であったため、胸膜、肺および縦隔の稀な腫瘍性病変にて、次世代シークエンサーにより検索を行った。 胸膜では、石灰化線維性腫瘍1例、孤在性線維性腫瘍6例、アデノマトイド腫瘍1例、肺では、胎児型腺癌 3例、腸型腺癌 5例、glomus tumor 1例、縦隔では、anaplasia を伴う胸腺腫2例が検討可能であった。 アデノマトイド腫瘍ではTAF1の遺伝子異常を認めた。anaplasia を伴う胸腺腫では、p53の遺伝子異常を認め、免疫染色では1例のみでp53の強発現を認めた。肺の腸型腺癌では、p53, EGFR の遺伝子異常を認め、1例では、未治療であるが、EGFRの治療耐性に関わる遺伝子異常を伴っていた。胎児型腺癌の1例では、BRAFの遺伝子異常を認めた。胎児型腺癌の他の1例では、USP9X, FANCD2, PTEN, SYNE1などの多数の遺伝子異常を認めた。肺原発のGlomus tumorにおいても、転座ではないが、NOTCH1の遺伝子異常を伴っていた。 肺の腸型腺癌では、通常型の肺腺癌と同様の遺伝子異常を伴うと考えられるが、時に未治療に関わらずEGFRの治療耐性に関わる遺伝子異常を認めると思われる。胎児型腺癌では多くの遺伝子異常が蓄積されている可能性が考えられた。anaplasiaを伴う胸腺腫では腫瘍の一部にp53遺伝子異常が生じた可能性が示唆された。 胸膜腫瘍では、石灰化線維性腫瘍では次世代シークエンサーの検索が困難であるため、新たな症例を追加し、論文作成を行う予定である。肺の胎児型腺癌と腸型腺癌に関して論文作成を行っている。glomus tumorに関しては症例報告の作成中である。anaplasia を伴う胸腺腫に関しては、通常型の胸腺腫と比較を行い論文作成を行う予定である。
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