研究課題/領域番号 |
16K08680
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研究機関 | 東京都立駒込病院(臨床研究室) |
研究代表者 |
元井 亨 東京都立駒込病院(臨床研究室), 病理科, 医長 (50291315)
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研究分担者 |
加藤 生真 東京都立駒込病院(臨床研究室), 病理科, 非常勤医師 (80644939)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨軟部腫瘍 / オートファジー / p62 / WNT経路 |
研究実績の概要 |
【背景と目的】骨軟部腫瘍におけるオートファジー(自食作用)の意義を知るため、前年度は骨巨細胞腫(GCT)を解析し、巨細胞にオートファジーマーカーp62陽性異常凝集体が特異的に出現することを見出した。そしてオートファジーの異常の存在とp62の診断マーカーとしての有用性を明らかにした。本年度は神経変性疾患で変異型FUSタンパクがオートファジーを障害する事実に着目し、FUSを融合遺伝子の3’側パートナーとして有する腫瘍におけるオートファジーの状態の検討を目的とした。またWNTシグナル経路の異常は骨軟部腫瘍においても重要であるが、近年、オートファジーとの密接な関連が知られているため同様に検討した。【方法】FUS融合遺伝子を有する粘液型脂肪肉腫(M)5例、低悪性度粘液線維肉腫(L)2例、硬化型類上皮線維肉腫(S)2例を用いた。またWNTシグナル構成分子であるβ-Cateninの異常核内集積のあるデスモイド線維腫症(D)6例を用いた。ホルマリン固定パラフィン包埋材料を用いて免疫組織化学的にオートふぁじマーカーp62及びLC3の発現を検索した。【結果】Mのp62発現は全例でほぼ陰性であった。L及びSでは全例で核内陽性所見が見られたが概して弱かった。一方、Dの全例で核内にびまん性強陽性像が見られた。一方、LC3は検索例の全例で陰性であった。【考察】今回検索した3種類のFUS関連腫瘍ではオートファジーの活性化はなかった。変異型FUSと異なり、FUS融合遺伝子のオートファジーへの関与は乏しいと推測された。一方、p62の核内集積をDの特徴として新たに見出した。β-Cateninの核内移行によるWNTシグナルの恒常的活性化の際にはオートファジーは抑制され、核内にp62が移行、集積していると推測された。またその下流にある既知のKeap1-Nrf2経路などを介してDの増殖に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はデスモイド線維腫症におけるp62の異常核内集積を新たに見出し、腫瘍におけるWNT経路の異常とオートファジーの関係のさらなる解明の糸口を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
デスモイド線維腫症(D)のp62とβ-cateninの関係性を明らかにすることで、WNTシグナル経路の異常とオートファジーの関係性を解明していく。Dは代表的な線維芽細胞・筋線維芽細胞性腫瘍であるが、同群に属する良性、悪性腫瘍におけるp62、LC3、β-cateninの発現状態と比較検討し、Dにおけるp62とβ-cateninの共発現状態の特殊性を明確にし、さらに外科的切除後にしばしば難治性で局所再発を繰り返すというDの臨床的特徴の理解や病理組織学的に形態の類似した腫瘍との鑑別診断への応用を探る。また、p62の下流にあり腫瘍増殖に関与するのKeap1-Nrf2経路の状態を検索し、Dの増殖機構を明らかにする。これらのデータを元に将来のオートファジーを標的とした治療法への応用の可能性についても考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に行う予定であったCISH法による遺伝子解析に必要なプローブ及びキットの費用及び免疫組織化学的解析に必要な抗血清の費用に相当している。次年度にこれらの解析を遂行する予定であり、その際に使用を予定している。
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