研究課題/領域番号 |
16K08681
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
竹下 淳 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 運動器疾患研究部, 室長 (50263009)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨代謝 / カップリング因子 / Cthrc1 / 受容体 / 骨形成 / 骨芽細胞分化 / Waif1 / Wnt |
研究実績の概要 |
骨カップリング因子として同定したCthrc1による骨形成促進機構を解析する目的で受容体として同定したWaif1に着目し、Waif1欠損ST2細胞やWaif1 KOマウスから調整した頭頂骨由来初代骨芽細胞を用いてCthrc1刺激による骨芽細胞分化に及ぼす影響を解析し、Cthrc1が骨芽細胞上で発現するWaif1を介してPKCδ、ERK、Rac1およびJNKを活性化することで骨芽細胞分化を刺激し骨形成を促進することを明らかにした。 骨芽細胞特異的コンディショナル Waif1 KO (ΔOB)マウスは骨形成と骨吸収の両方が低下した低骨代謝回転型で高骨量を発症することが判明し、骨吸収低下の原因が骨芽細胞におけるRANKLの発現低下であることを突き止めた。ΔOBマウスにRANKLを投与することでカップリング機能を評価したところ、RANKLによる骨吸収には差異は認められず、骨吸収後に起こる骨形成の活性化が低下し骨量回復が遅延し、ΔOBマウスはカップリング機能が障害していることが明らかとなった。このカップリング機能障害は破骨細胞特異的Cthrc1 cKOマウスと同様な表現型であり、Waif1がCthrc1の受容機能を担っている重要な細胞膜タンパクであることが実証された。 Hisタグの付いた分泌型Waif1 (sWaif1-His)を高発現する細胞株を樹立し、sWaif1-Hisタンパクを精製した。このタンパクを抗原とし、マウスに免疫することによりモノクローナル抗体を作出した。Waif1欠損ST2およびWaif1高発現ST2細胞株を用いてモノクローナル抗体をスクリーニングし、細胞表面上のWaif1を認識する多数の陽性ハイブリドーマを取得した。また、それらの中からALP活性を指標として骨芽細胞分化を促進するハイブリドーマ株を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨芽細胞でWaif1をノックアウトしたΔOBマウスは骨形成のみならず骨吸収も低下し、骨形成が骨吸収を上回ることにより骨量が増加したと考えられた。骨芽細胞におけるWaif1欠損で骨吸収が低下することは予想しなかったが、ノックアウトマウスの骨における遺伝子発現解析によりRANKLの発現低下を認め、in vitroの解析から骨芽細胞でWaif1をKOするとRANKLの遺伝子発現が低下することを突き止めた。また、KO細胞にWaif1を再発現させるとRANKL遺伝子の発現が回復し、破骨細胞形成を促進することから骨芽細胞におけるWaif1の発現自体がRANKL発現を介して骨吸収を制御していることが判明した。従ってCthrc1によるカップリング制御はWaif1を介して骨形成のみならず骨吸収を制御することにより巧妙に骨代謝を制御していることがわかった。また、破骨細胞が産生するCthrc1のみならず受容体として同定した骨芽細胞上で発現するWaif1のノックアウトマウスにおいてもRANKL投与によるカップリング機能の評価系によりカップリング機能が障害されることからWaif1を介したCthrc1刺激による骨代謝制御機構の重要性が明らかとなった。 カップリング機能促進剤としての創薬を目指してWaif1を介したCthrc1刺激をミミックするモノクローナル抗体の樹立に関してスクリーニングはほぼ予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
骨カップリング機能促進剤の開発を目的とし、Cthrc1刺激をミミックし骨形成を促進する薬剤を検索するためにCthrc1の受容体であるWaif1に結合しALP活性を促進するモノクローナル抗体をスクリーニングすることを目指している。Waif1の細胞外領域において骨形成の促進に関わるCthrc1の結合部位を明らかにするために、Waif1の欠失変異体を作成し、免疫沈降法によりCthrc1の結合部位を決定する。また、そのCthrc1の結合領域を認識するモノクローナル抗体をスクリーニングすることによりCthrc1刺激をミミックするモノクローナル抗体を検索する。得られたモノクローナル抗体をマウスに投与することにより骨形成を促進するかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)昨年度中に発注した消耗品が年度内に納品されなかったため。
(使用計画)昨年度発注した消耗品が今年度中に納品される予定。
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