骨粗鬆症の新規治療薬の開発を目的とし、骨吸収から骨形成へのカップリングを制御する因子としてCthrc1を同定したので、次にシグナル伝達機構を解明するために受容体としてWaif1を同定し、マウスの遺伝学と種々の解析法を用いて骨代謝におけるWaif1の機能解明を試みた。 骨芽細胞特異的にWaif1を欠損したマウスは野生型に比べ約20%骨量が増加したが、骨形態計測法の結果骨形成のみならず骨吸収も低下することが判明した。骨芽細胞でWaif1を欠失するとCthrc1によるALP活性の上昇が消失するだけでなく、破骨細胞分化因子であるRanklの発現低下を明らかにした。従って、Waif1欠損における骨量増加は骨形成と骨吸収の両方が低下し、骨形成が骨吸収を上回ることで低骨代謝回転型高骨量を発症することが判明した。そこで、Waif1欠損マウスにRANKLを投与し骨吸収から骨形成へのカップリング機能を解析したところ、破骨細胞特異的Cthrc1欠損マウスと同様にWaif1欠損マウスでも骨吸収後の骨形成に障害が認められ、骨量回復が遅延することがわかった。すなわち、破骨細胞におけるCthrc1欠損と骨芽細胞におけるWaif1欠損は共にカップリング機能障害という同じ表現型を示すことが判明した。従って、Waif1はカップリング因子であるCthrc1 の機能的な受容体として骨代謝制御において極めて重要であることが明らかとなった。 次に、Waif1を認識しCthrc1刺激をミミックするモノクローナル抗体を作出するために、リコンビナント可溶性Waif1タンパクをマウスに免疫し、常法に従いモノクローナル抗体を作製し、骨芽細胞表面に発現するWaif1を認識し骨芽細胞分化を促進する抗体を得た。現在、ハイブリドーマを用いて精製した抗体をマウスに投与し、in vivoで骨形成を促進する抗体のスクリーニングを行っている。
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