研究課題
膵癌患者の予後改善のためには,化学療法を中心とする非切除治療の治療成績の向上が鍵となっており,予後を規定する因子に対応した個別化された分子標的治療の導入およびそのコンパニオン診断法の確立が求められている.本研究は,先行研究として実施した同一患者原発巣・転移巣由来細胞株モデルからの遺伝子発現プロファイル解析により同定した複数のRHO関連タンパク(RRP)群に着目し,本年度は以下の2課題に取り組んだ.DNAマイクロアレイ解析による超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA検体)により検体採取された膵癌30症例のRRP分子の遺伝子発現検討:外科切除された膵癌のFFPE検体を用いて遺伝子発現プロファイル解析を行い,解析データを得ることができ,一定の傾向が得られたものの,RNA品質が低く,発現変動レンジが小さかったため,検体の再採取および再解析の必要が生じた.そこで本年度はRNA品質の高い検体を得るため,前向きにEUS-FNA検体30症例の収集および非FFPE検体(PAX固定検体)の作製を行った.膵癌細胞株の公共データベースを用いたRRP群遺伝子発現解析:RRP群遺伝子発現プロファイルと膵癌分子サブタイピングの関係を検証するため公共データベースに登録された21種の膵癌細胞株のARHGAPおよびARHGEFファミリーに関する遺伝子発現プロファイリングを行ったところ,階層的クラスター解析により,これら遺伝子発現により細胞株が3群に分かれ,このうちの1群にQuasimesenchymal(QM)タイプ細胞株が多く含まれることが明らかとなった.
3: やや遅れている
本研究目的の達成のため,3年目にあたる平成30年度は,RNA品質の高い検体の前向き収集およびそれを用いたDNAマイクロアレイ解析によるRRPの遺伝子発現検討を計画したが,本年度内に目標としていた30症例のEUS-FNA検体の収集および非FFPE検体(PAX固定検体)の作製は完了したものの,症例集積に時間を要したため,DNAマイクロアレイ解析の実施には至らなかった.以上を踏まえ,今年度の研究の進捗については,解析が未完了となったことから,自己点検による評価の区分を(3)とした.
期間延長を行った4年目にあたる平成31年度においては,前年度実施に至らなかったDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイル解析を行い,またこの解析で抽出された分子について,臨床病理学的検討およびin vitroでの解析も併せて実施する.
上記網羅的遺伝子発現解析の実施に遅延が発生し,これを次年度に行うこととしたため,翌年度に一部使用額が生じた.
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件)
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