研究課題
胃癌検体から抽出したDNAに対して、Affimetrix OncoScan assayを行った。その結果から、特に血管内皮増殖因子A (Vascular endothelial growth factor A: VEGFA) を含む染色体領域の増幅に着目した。VEGFA遺伝子を含む染色体領域に対してFISH probeを作成し、それを用いて胃癌FFPE検体100例に対してFISH法を施行したところ、その約4%において遺伝子増幅が認められた。さらに免疫組織学的検討により遺伝子増幅との相関を検討したところ、遺伝子増幅数とタンパク発現の強度には有意な正の相関が確認された。この遺伝子の増幅やタンパク発現の程度と、年齢、性別、進行度、リンパ節転移、脈管侵襲などの臨床病理学的な因子との相関を検討したが、有意なものは得られなかったため、本年度は特に腫瘍微小環境に含まれる炎症細胞の分布に着目した。それらの炎症細胞のうち腫瘍細胞の近傍に見られるものは、腫瘍随伴マクロファージ (Tumor associated macrophage: TAM)と呼ばれ、腫瘍形成を促進する作用を示すことが示唆されている。腫瘍随伴マクロファージはM1型とM2型に分類される。胃癌検体に対してM2型マクロファージで発現することが示唆されているCD163に対する抗体を用いて、免疫染色を行い、腫瘍周囲におけるCD163陽性細胞の数および分布を検索した。VEGFAの遺伝子増幅が認められた胃癌検体においては、対照群と比較して腫瘍周囲におけるCD163陽性細胞数の減少が認められた。以上の結果から、約4%のヒト進行胃癌においては、VEGFタンパクの過剰発現を伴うVEGFA遺伝子増幅がその形成に関与していることが示唆され、そのメカニズムとしてCD163陽性のM2型マクロファージの減少が関与する可能性があることが示唆された。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件)
Journal of Medical Case Reports
巻: 12(1) ページ: 95-95
10.1186/s13256-018-1629-8.
Methods in Molecular Biology
巻: 1726 ページ: 101-109
10.1007/978-1-4939-7565-5_10.