研究実績の概要 |
成熟奇形腫に合併した粘液性腫瘍を同側性(A群)、対側性(B群)に分類し、成熟奇形腫に合併しない粘液性腫瘍(C群)と免疫組織学的な検討を行った。免疫組織化学的に検討したのはサイトケラチン7(CK7)、CK20、CDX2とMUC1,MUC2,MUC5AC, MUC6といった粘液形質である。その結果A群においては、特に遺伝学的に奇形腫起源と証明された症例ではCK7,CK20,CDX2陽性の腸型の形質を示した。B群、C群においては腸型、頸管腺型の形質を示すものが同数であった。成熟奇形腫に合併した同側性の粘液性腫瘍のうち腸管型の症例は成熟奇形腫の腸管成分由来と考えられた。 次に、卵巣未熟奇形腫に合併した腹膜神経膠腫症の起源についてSTR解析を用いた検討を行った。腹膜神経膠腫症は腹膜に成熟神経膠組織が多発結節をつくるもので、予後良好とされるが、その起源が未熟奇形腫なのが、腹膜に存在する未熟な体細胞なのか意見の分かれるところであった。成熟奇形腫のSTR解析がホモ接合型を示すのに比して未熟奇形腫のSTR解析パターンには、すべての遺伝子座で体細胞と一致するヘテロ接合型の症例と、一部の遺伝子座において体細胞と異なったホモ接合型が混在する混合型を示す症例が見られた。この結果から未熟奇形腫が成熟奇形腫より早期に腫瘍化することがわかった。さらに混合型を示す未熟奇形腫に合併した腹膜神経膠腫症のSTR解析結果を未熟奇形腫と比較すると同様の混合型パターンをとることが示され、神経膠腫症が未熟奇形腫の播種によりものであることが示唆された。
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