研究実績の概要 |
成熟奇形腫に合併した粘液性腫瘍のSTR解析を行い、粘液性腫瘍の起源が奇形腫か、体細胞性かを明らかにしたのち、粘液性腫瘍の性状が腸型か、頸管型かを組織学的に分類、粘液性腫瘍が腺腫か、境界悪性か、癌腫かを分類し、それぞれのグループにつき、CK(サイトケラチン)7, CK20, CDX2等の消化管マーカー、MUC1,2,5AC,6等の粘液マーカーに対する免疫組織化学染色の結果を比較した。成熟奇形腫に由来する粘液性腫瘍は腸管由来であり、腸管の免疫染色が陽性となり、腸管の粘液形質を有するものが多いものと推測していたが、頸管腺型の組織像、免疫組織化学的な形質を有するものも多く見られた。臨床病理学的には、成熟奇形腫に由来する粘液性腫瘍で、境界悪性以上の場合は、腹膜偽粘液腫を合併する症例が存在したが、虫垂等の腫瘍に合併する腹膜偽粘液腫との差異については、症例数が少なく検討できなかった。次に、未熟奇形腫に合併した腹膜神経膠腫症につきその起源を確定するために、腹膜神経膠腫症組織、未熟奇形腫組織、体細胞組織をマイクロダイセクションし、核酸を抽出してSTR解析を行った。腹膜神経膠腫症組織の由来については、従来から未熟奇形腫由来、すなわち播種とする研究結果、体細胞由来とする研究結果の両方が存在していたが、今回の我々の検討では腹膜神経膠腫症全例が、未熟奇形腫由来であった。さらに、STR解析の結果から未熟奇形腫の発生段階についても考察を行った。その結果では未熟奇形腫は、成熟奇形腫の発生と異なり、第一減数分裂前のヘテロ接合型を示す胚細胞に由来することが示唆された。
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