研究実績の概要 |
乳頭腫を除く乳腺腫瘍のデータは、30年度論文として出版された。 大腸では、リンパ節転移(ln)陽性の外科的切除左側大腸癌8例の追加症例も含め、ミスマッチ修復酵素の発現を免疫染色で確認し、MSI陽性例を除外した。48例(腺腫成分のある/ないC+A/C-Aが32例/16例)112サンプルについて、あらためてマイクロアレイデータを解析した結果、染色体変化では4p-がC+AよりC-Aに有意に多く見られたが、これがde novo癌の特徴であるのかどうかを明らかにするために、階層的クラスタ(CL)解析を行うと、全サンプルは4 CLsに別れ、CL1, CL4とCL3の大半がC+A、CL2とCL3の一部がC-Aであった。48例中12例で、同一症例のサンプルが異なるCLsに分かれた。その場合、CL1, CL2, CL4に腺腫ないし粘膜(m)病変が分布し、それらの腫瘍のより進展した浸潤部(i)やlnがCL3に含まれた。また上記の4p-は、CL3に特徴的に見られた。これらのことから、4p-はde novo癌の特徴ではなく、腺腫由来癌が進展し、腺腫成分を失ったものに特徴的であることが分かった。 lnはCL2, CL3のみに見られたが、CL2の4例中2例でm成分がCL2に、iやln成分がCL3にあり、腺腫成分は(切除時には)ないものの、late eventが頻発するadenoma-carcinoma sequence型と考えられた。一方他の2例はm成分からln成分までCL2に含まれ、染色体変化がmからlnまでほとんど変わらなかった。このゲノムの安定な一群こそがde novo型の癌と考えられ、その頻度は手術検体の7%であった。 ESD材料はCL1, CL3, CL4に分布した。CL3に含まれるESD症例は、他よりもリンパ節転移リスクが高いと予知できる可能性がある。
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