研究課題
消化管癌における転写超保存領域T-UCRの意義を明らかにするため、本年度はヒト胃癌で発現低下が報告されているUc.160+について胃癌における発現と機能解析を行った。定量的RT-PCR法による検討では非癌部と比較して癌部ではUc.160+の発現低下が見られ、ヒト胃癌組織標本におけるin situ hybridizationによる検討でも同様の結果が認められた。バイサルファイトシークエンス法によってUc.160+の発現低下はDNAメチル化によることを示し、更にUc.160+はPTENの発現を調節することによってAktのリン酸化を抑制することも明らかにした。また、網羅的遺伝子発現解析によって見出されたSignal peptidase complex 18 (SPC18)が大腸癌の58%に発現し、N因子、stageの高いものほど高発現することから腫瘍進展との関連や予後不良と相関することを見出したが、生物学的機能解析によりSPC18の発現がEGFR, Erk, Aktのリン酸化と関連することが判明した。免疫組織化学的解析によりSPC18の腫瘍内局在は特に大腸癌の浸潤先進部に多いことがわかり、β-cateninの核内集積やMMP7の発現と有意に相関することも明らかにした。更に大腸の前癌性病変の検討により、SPC18は通常型のadenoma-carcinoma pathwayから発生する大腸癌と深く関わり、serrated pathwayを経る大腸癌ではSPC18の陽性率が高くないことも示した。
2: おおむね順調に進展している
現在までに本研究の解析に必要な消化管癌を含むヒト悪性腫瘍における組織サンプルを十分収集できており、実際にT-UCRs発現解析データに基づく候補の検証を行っている。本年度解析したUc.160+は胃癌において発現の低下が見られ、その原因としてメチル化の関与を含む分子機構の一端が明らかになったことから治療標的としての応用も期待される。複数の候補となるT-UCRの解析を実際のヒト消化管癌のサンプルを用いてその意義について検証する作業は、おおむね順調に進展しているものと考えられる。
消化管癌におけるT-UCRの発現と分子機構を解明するために、引き続き本年度と同様の解析を行うとともに、細胞株を用いたspheroid形成等の形態学的変化の観察や多数の臨床検体を用いた臨床病理学的検討、さらには関連分子の検討などを行い、治療標的分子、血清腫瘍マーカー、鑑別診断マーカー等の開発につなげる予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (25件) (うち国際共著 1件、 査読あり 25件、 オープンアクセス 11件、 謝辞記載あり 17件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Oncol Lett
巻: 13 ページ: 937-941
10.3892/ol.2016.5520.
Gastric Cancer
巻: 20 ページ: 929-939
10.1007/s10120-017-0713-x.
Elife
巻: 10 ページ: 6
10.7554/eLife.20331.
Cancer Sci
巻: 108 ページ: 143-150
10.1111/cas.13121.
Urol Oncol
巻: 35 ページ: 13-31
10.1016/j.urolonc.2016.08.007.
Pathobiology
巻: 84 ページ: 16-24
10.1159/000447303.
Asian J Androl
巻: 19 ページ: 203-207
10.4103/1008-682X.179155.
Ann Surg Oncol
巻: 24 ページ: 594-602
10.1245/s10434-016-5100-z.
Anticancer Res.
巻: 37 ページ: 47-55
PLoS One.
巻: 11 ページ: 0166422
10.1371/journal.pone.0166422.
Endosc Int Open.
巻: 4 ページ: 927-932
10.1055/s-0042-110788.
Surg Case Rep.
巻: 2 ページ: 94
10.1186/s40792-016-0222-x.
Pathol Int.
巻: 66 ページ: 583-586
10.1111/pin.12450.
Oncogenesis.
巻: 15 ページ: 253
10.1038/oncsis.2016.47.
Pathobiology.
巻: 83 ページ: 308-315
10.1159/000445121.
Case Rep Oncol.
巻: 27 ページ: 262-266
10.1159/000446065.
Oncol Rep.
巻: 36 ページ: 349-355
10.3892/or.2016.4781.
Cancer Med.
巻: 5 ページ: 1546-1555
10.1002/cam4.697.
Jpn J Radiol.
巻: 34 ページ: 307-311
10.1007/s11604-016-0525-7.
Oncogene.
巻: 35 ページ: 4447-4458
10.1038/onc.2015.519.
Intern Med.
巻: 55 ページ: 135-139
10.2169/internalmedicine.55.5937.
巻: 35 ページ: 3598-3606
10.1038/onc.2015.445.
J Gastroenterol.
巻: 51 ページ: 447-457
10.1007/s00535-015-1121-9.
Gastric Cancer.
巻: 19 ページ: 443-452
10.1007/s10120-015-0511-2.
巻: 19 ページ: 370-380
10.1007/s10120-015-0478-z.
http://home.hiroshima-u.ac.jp/byori1/index.html