研究課題
我々は、これまで肝臓や膵臓、胆管等の種々のヒト腫瘍におけるタイト結合分子の発現に関して検討し、報告してきた。肺腺癌に関してはタイト結合関連分子claudinの発現を免疫組織化学的に検討し、肺腫瘍の診断マーカーとなりうることを報告した(Yamada, et al. Med Mol Morphol. 49:163-169, 2016)。今回は、肺腺癌におけるタイト結合関連分子JAM-Aに関して免疫組織化学的検討に加え、細胞株を用いて腫瘍形成や発癌への関与、診断マーカーや治療標的としての有用性を評価した。その結果以下のことが明らかとなった。1)免疫染色上、タイト結合関連分子JAM‐Aは非腫瘍と比較し、肺異型腺腫様過形成および肺腺癌において優位に発現が増加していた。また、肺異型腺腫様過形成よりも肺腺癌において優位に発現が増加していた。2)肺腺癌細胞のJAM-Aの発現抑制により、アポトーシス感受性が増加した。3)肺腺癌細胞のJAM-Aの発現抑制により、in vitroにおけるコロニー形成能およびin vivoにおける造腫瘍能の低下が見られた。反対に、肺腺癌細胞のJAM-Aの発現増加により腫瘍形成が促進された。4)抗JAM-A抗体は効率的に肺腺癌細胞の細胞増殖を低下させ、アポトーシスを引き起こした。以上から、JAM-Aは肺腫瘍の有用な診断マーカーになりうること、JAM-A阻害による新規癌治療の可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
肺腺癌に加え、子宮頚部腺癌や唾液腺腫瘍など他臓器の腫瘍に関しても検討を進めている。
種々の腫瘍におけるタイト結合分子の腫瘍形成や発癌への関与を明らかにし、診断マーカーや治療標的としての有用性確立に向け検討をする。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 1件)
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