研究課題/領域番号 |
16K08695
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
今井 康雄 獨協医科大学, 医学部, 教授 (10342651)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | alpha-taxilin / 大腸癌 / 免疫染色 / 生物学的悪性度 / 予後 |
研究実績の概要 |
Alpha-taxilinは細胞内膜輸送に関連する蛋白質であるが,その生理機能については未だ多くが不明である.また一部の悪性腫瘍では発現が亢進することが知られており,膠芽腫,肝細胞癌や腎細胞癌での発現亢進と悪性度,予後との相関が報告され,腫瘍マーカーあるいは予後マーカーとしての可能性が示唆されている.一方,正常の消化管上皮ではalpha-taxilinの発現が増殖帯に一致して見られることから,消化管癌でも細胞増殖能や悪性度,転移と予後不良との関連が予想されるものの,未だ報告がなされていない.本研究では,消化管癌についてalpha-taxilinの発現と生物学的悪性度の関連を明らかにすることを目的として研究を開始した.1年目は 獨協医科大学細胞生物学講座で開発された抗alpha-taxilin抗体の免疫染色条件を決定した.2年目の平成29年度は,2012年から2015年にかけて獨協医科大学病院と国際医療福祉大学塩谷病院で内視鏡的に切除された大腸腺腫内癌(粘膜内癌)20症例を対象にalpha-taxilinの発現を免疫組織化学的に検討した.陰窩の増殖帯は陰窩底部に存在し,陰窩上方では増殖活性は低い.そこで陰窩を上中下に3等分し,各々についてKi-67指数とalpha-taxilinの発現レベルを評価した.その結果,腺腫と粘膜内癌の双方でalpha-taxilin発現レベルはKi-67指数と有意な相関を示し,細胞増殖能のよい指標になりうることが示唆された.一方で,alpha-taxilinとKi-67ともに腫瘍腺管の上1/3で同程度に高発現しており,alpha-taxilinの発現のみでは良性,悪性の鑑別診断には十分でないことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
獨協医科大学細胞生物学講座で開発された抗alpha-taxilin抗体の免疫染色の条件が決定し,信頼性と再現性のある染色結果を得ることが可能となった.次に,2012年から2015年の3年間に獨協医科大学病院消化器内科と国際医療福祉大学塩谷病院で内視鏡的に切除された大腸癌の切除標本の中から腺腫と腺癌を同一病変中に含む腫瘍(腺腫内癌)を探し出し,20例をリストアップした.これらに対してalpha-taxilinとKi-67の免疫染色を行うことで,増殖能とalpha-taxilin発現レベルの関連,正常上皮から腺腫,腺癌へと病変がプログレッションしていく経過でのalpha-taxilinの発現状況の変化とその意義を明確にすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
進行大腸癌でのalpha-taxilinの発現レベルと臨床病理学的パラメーター,および無再発生存期間,全生存期間との関連を解析する.Alpha-taxilinの発現レベルは,腫瘍の表面部分,中間部分,最深部とに分けて上記の解析を行う.また腫瘍関連間質細胞でのalpha-taxilinの発現状況にも注目して,上記の解析を行いたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は概ね順調に進行しており,実験作業がスムーズに進行し,追加の標本作成や再実験が少なく済んだことから,試薬購入の費用が節約できた. 残額は次年度に繰り越し,さらなる実験データの取得のための試薬購入と英文論文として研究内容を発表するに際しての出版費用に充てる予定である.
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