研究課題/領域番号 |
16K08696
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
福村 由紀 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90407312)
|
研究分担者 |
三富 弘之 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (90181940)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 膵管内乳頭状粘液産生腫瘍 / IPMN / micro RNA / miR21 / miR181b |
研究実績の概要 |
画像診断で指摘された膵管内乳頭粘液産生腫瘍(IPMN)より、予後不良な浸潤性IPMNの発見に有用なbiomarkerを同定し、治療へ展開することを目的に、平成28年度は、画像診断情報、術前に得られた臨床情報、生検結果などの臨床病理データの取得、4つのターゲットmicroRNA発現解析(aRT-PCR法)、統計解析を行った。なお、4つのターゲットmicroRNAは研究者らの過去の大腸鋸歯状ポリープ発癌過程での知見を参考に選択した。 非浸潤性IPMN 27例 上皮内IPMC 8例 浸潤性IPMN 25例, 比較対象として正常膵(膵癌切除例非腫瘍部ホルマリン固定パラフィン切片)から膵管上皮細胞20サンプル, 腺房細胞20サンプル, ラ氏島細胞 20サンプルを用いた。 臨床病理情報では、膵管型、主膵管径、乳頭状隆起径、IPMN組織亜型、隔壁の線維化密度がそれぞれ単変量解析で浸潤性IPMNの診断に有用とのデータを得た。多変量解析ではIPMN組織亜型のみに有意差を認め、生検による組織亜型の判定がIPMN診療に重要であることが確認された。[第103回 消化器病学会 (2017年4月、東京、パネルディスカッション)で発表] microRNA解析では、miR21, 181bの高発現がIPMN悪性症例に見られる傾向があるが、統計学的有意差には至っていない。 平成29年度は症例数を増やし、これまでのデータの再現性を確認するとともに、上記にmiRの機能解析を行っていく。また、wnt/βカテニンシグナル伝達系AKT/mTOR系、Hedgehog伝達系のIPMN悪性度との関わりを、上記microRNA発現との関わりを確認する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象症例とし準備した浸潤性IPMN症例の内、組織像の詳細な検討により、15症例は併存膵癌(IPMNの進行により間質浸潤を呈したものではなく、別個の病変)の可能性があると考えられ、当初予定した症例数が減少してしまった。より正確なデータ取得のため、現在、症例数をさらに収集し、実験を行っている。 対象症例の絞り込み・再収集に時間を要したことが研究の遅延の一因と思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、4つのmicroRNA解析を行ったが、浸潤性IPMNの抽出において統計学的有意差は得られていない。従って、今後、対象症例を増やし検討するが、有意差がなければ、文献検索で得られた他のmiR解析やmiR microarrayを追加する予定である。 平成29年度はIPMN悪性化におけるシグナル伝達系活性化解析を行う。(1) Wnt/β-catenin シグナル伝達系, (2) AKT/mTORシグナル伝達系、(3) Hedgehog シグナル伝達系に関し、経路に関与する遺伝子変異・メチル化、蛋白発現変化のデータを得る。各シグナル伝達系活性化とmicroRNA発現相関を統計学的に解析する。 その後、膵癌培養細胞を用い、上記microRNAの強制発現、抑制を行い、機能解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
対象症例数が15例減ってしまったことなどがその原因と思われる。
|
次年度使用額の使用計画 |
症例数をさらに収集したため、これらの追加サンプルの解析に充てたいと考える。
|