研究実績の概要 |
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は浸潤癌となると非常に予後が悪い。浸潤性IPMNの診断のため、膵液セルブロックを用いたMUC染色や組織亜型の評価、セルブロックから抽出したDNAを用いたGNAS変異解析、主膵管拡張径/形態・管内隆起高データを検討してきたが、満足する結果は得られなかった。 IPMNの発癌過程には、Wnt/β-cateninシグナル伝達系、GTP結合蛋白関連シグナル伝達系、AKT/mTORシグナル伝達系、Hedgehogシグナル伝達系のクロストーク・活性化が関与する。研究者らは浸潤性IPMNの膵液・血液中バイオマーカーを得るために、また、浸潤性IPMNのオーダーメード治療薬を開発を期待し、浸潤性IPMNに関与する、また、上記シグナル伝達経路活性化に関与するマイクロRNAを明らかにすることを目的とし、miR20-a, 21, 93, 181bのIPMN腺腫、上皮内癌、浸潤癌での発現を調べた。 結果、miR21高発現はIPMN上皮内癌/浸潤癌群で、miR181b高発現が浸潤癌群で見られた。浸潤癌群でmiR20-aが高発現傾向を示したが有意差は得られなかった。 次に、miR-181b発現とWnt/β-cateninシグナル伝達経路活性化との関連をβ-catenin核移行を指標に検討した結果、その有意な関連が確認された。 現在、Wnt/β-cateninシグナル伝達系活性化機転としてβ-catenin, APC, AXIN遺伝子変異、プロモーター領域のメチル化を検索中である。 また、AKT/mTORシグナル伝達系、Hedgehogシグナル伝達系との関連を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
浸潤性IPMNで高発現を示すmiR181bのシグナル伝達系への関与を調べるために、Wnt/β-cateninシグナル伝達系活性化機転としてβ-catenin, APC, AXIN遺伝子変異、プロモーター領域のメチル化を解析する。AKT/mTORシグナル伝達系に関しては、PTEN遺伝子変異の解析(ターゲットシーケンス法)、Akt, mTOR発現をqPCR法で、pmTOR, pAkt, pS6, p4E-BP4蛋白発現を免疫染色で検討する。Hedgehogシグナル伝達系は、PTCH1遺伝子変異、GLI-1をqPCR法で、Sonic Hedgehog, pathched-1, GLI-1蛋白発現を免疫染色で検討する。 本研究はバイオマーカー検索も目的としているため、文献検索およびmiR microarray検索(nanostring解析, アズワン社)にて解析miRを4-5個増やす予定である。
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