研究課題
糸球体腎炎の診断は糸球体の光顕所見を基になされるが、形態以外の客観的指標に乏しく、しばしば診断の確定に難渋する症例が経験される。本研究では、質量分析を用いて糸球体病変を規定する分子群の同定を行い、形態学のみならず糸球体病変を規定する分子に着目し診断への応用を目指した。質量分析を用いた解析方法を確立するため、まず剖検症例の腎切片を用い、レーザーマイクロダイセクションにて糸球体のみを抽出し、蛋白質を精製し解析した。続いて、腎生検検体を用いて同様の検討を行った結果、腎生検検体のわずかな糸球体からも蛋白質の解析を行うことが可能となった。アミロイドはしばしば免疫染色が困難で、特に免疫グロブリン軽鎖の場合、前駆物質の同定に苦慮することがしばしば経験される。質量分析を行うことで、kappa鎖もしくはlambda鎖の同定が極めて容易となった。特に、解剖例において初めてアミロイドーシスであることが明らかとなった症例は、患者血清を用いたfree light chain等の解析を行うことができないため、質量分析による前駆物質の同定が非常に有効であった。また、非アミロイド物質による沈着症においても質量分析が有効であることが証明された。膜性腎症を呈する症例で、われわれはapoEによる沈着症であることを明らかにした。さらに、ある特定の蛋白質が沈着物と考えられる症例も経験しており、従来の沈着症の概念が大きく変わる可能性が示唆された。この特定の蛋白質については引き続き実験を行い学会発表、論文投稿を行う予定である。
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