研究課題/領域番号 |
16K08699
|
研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
塩竈 和也 藤田医科大学, 医療科学部, 講師 (10387699)
|
研究分担者 |
尾之内 高慶 藤田医科大学, 共同利用研究推進施設, 講師 (20632954)
堤 寛 藤田医科大学, 医学部, 教授 (80138643) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 好中球細胞外トラップ / NETosis / 宮西氏分類 / 免疫染色 / 細胞診 / 核線 |
研究実績の概要 |
前年度の成果をもとに、同じ線維状形態を示すNETsと核線の鑑別に着目して、細胞診標本を用いた免疫組織化学的解析を行った。パパニコロウ染色で好中球浸潤と線維状構造物が確認された喀痰細胞診標本42例を対象とした。核線とは、1963年に宮西氏が定義した概念である。この宮西氏分類に従って、細胞診標本上の線維状構造物を3種類(線状、帯状、顆粒状)に分類した。目的箇所を細胞転写したのち、各種NETsマーカーを用いた免疫染色を施行した。宮西氏の分類において線状の形態を示す線維状構造物に明瞭な陽性シグナルが認められた。3/15例の線維状構造物に対して、各種NETsマーカーが強陽性を示した。それらはいずれもヘマトキシリン好性の線維状構造物だった。弱陽性を示す症例は、12/15例確認された。大部分が判定困難であり、それらは帯状あるいは顆粒状の形態を示す線維状構造物が多くを占めた。アルシアン青染色を加えた二重染色によって、線状のヘマトキシリン好性の線維状構造物をNETsと粘液に染め分けることに成功した。さらに、両者は単独発現や共存発現を示すことを見出した。免疫染色で判定困難な帯状の形態を示す線維状構造物は、ほとんどが粘液成分だった。ミエロペルオキシダーゼおよびラクトフェリン免疫染色では、通常形態の好中球の核に陽性を示す細胞像(核と細胞質成分の融合段階だと思われる)が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一部実行できていない実験が残っている。現在までに得られた結果は以下の5点である。①宮西氏の分類において線状の形態を示す線維状構造物に明瞭な陽性シグナルが認められた。②3/15例の線維状構造物に対して、各種NETsマーカーが強陽性を示した。それらはいずれもヘマトキシリン好性の線維状構造物だった。③弱陽性を示す症例は、12/15例確認された。大部分が判定困難であり、それらは帯状あるいは顆粒状の形態を示す線維状構造物が多くを占めた。④アルシアン青染色を加えた二重染色によって、線状のヘマトキシリン好性の線維状構造物をNETsと粘液に染め分けることに成功した。さらに、両者は単独発現や共存発現を示すことを見出した。⑤免疫染色で判定困難な帯状の形態を示す線維状構造物は、ほとんどが粘液成分だった。ミエロペルオキシダーゼおよびラクトフェリン免疫染色では、通常形態の好中球の核に陽性を示す細胞像(核と細胞質成分の融合段階だと思われる)が確認された。宮西氏が定義した核線には、1963年当時普及していなかった免疫染色技術を用いることによって、NETsが含まれることを証明できた。パパニコロウ染色でヘマトキシリン好性かつ線状の線維状構造物の場合、NETsである可能性が高いことを明らかにした。本研究成果は、核線に新たな定義を加えるとともに、今後の細胞診業務における診断基準の一助となりうる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでのデータを後押しするために、さらに超微構造解析を加える必要がある。すなわち、NETsが明瞭に確認された組織標本および細胞診標本を選出して、NETsマーカーを用いた免疫電顕を施行する。NETs線維に陽性シグナルが存在するのか、透過型電子顕微鏡を用いて詳細に解析する。光-電子相関顕微鏡(Correlative light and electron microscopy: CLEM)法とは、同一部位を共焦点レーザー顕微鏡と走査型電子顕微鏡の両方で観察する方法である。2つの画像を重ね合わせることによって、立体的で明瞭な微細構造が観察できる強力なツールである。CLEM法によって、光学顕微鏡レベルでは観察しづらい約30 nmの線維状構造物の特異性を確認する。最終的にすべてのデータを照らし合わせて総合的に解析終了後、ただちに英文論文作成を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2017年度より、本学医学部第一病理学講座から本学医療科学部臨床検査学科へ異動した。新天地で研究を継続するため、研究環境の整備に多くの時間を費やさざるを得なかった。超微構造解析のための走査型電子顕微鏡の買い替え時期も重なり、一時期使用できない状況が続いた。新たな業務の負担も重なり、予想以上の多忙を極めた。その結果、当初予定していた研究計画が大幅に遅れる結果を招いた。実施できなかった超微構造解析(免疫電顕およびCLEM法)を行い、NETs線維の特異性を確認する。
|