研究課題/領域番号 |
16K08701
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
森谷 卓也 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00230160)
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研究分担者 |
紅林 淳一 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10248255)
鈴木 貴 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10261629)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乳癌 / 病理 / 免疫組織化学 / 非浸潤癌 / 上皮内癌 / 前癌病変 / 異型乳管過形成 |
研究実績の概要 |
非浸潤性乳管癌(DCIS)の手術例76例を抽出し、integrin(alpha v beta 6)とMMP-9に対する免疫組織染色を施行し,結果をDCISの核異型度,van Nuys Group,およびバイオマーカー(ER,PgR,HER2)と比較した。また、浸潤径5mm以下の初期浸潤癌76例の浸潤巣並びに並存している非浸潤性乳癌成分における発現とも比較した。Integrinは全例で腫瘍部乳管の筋上皮細胞に発現していた。高発現は52例(68.4%)で,高度核異型とvan Nuys Group3と有意に相関を示した(p<0.05)が, MMP-9発現(35例;46.1%)とは相関はなかった。以前の研究では初期浸潤癌76例におけるintegrin高発現は51例(67.1%)であることを経験しており、DCISにおいてもこの頻度は同じであった。Integrin高発現はDCISから浸潤癌への進展の指標となる可能性があることが示唆された。MMP-9は浸潤径増大とともに発現の程度が増すことを明らかにしており、今回DCISにおける乳管周囲間質での発現は初期浸潤癌周囲間質(75.0%)より低率(p<0.01)であったことからMMP-9は浸潤開始とともに関与する物質であることが明らかとなった。DCISのパターン別にみると、嚢胞内乳頭状パターンの癌でintegrin発現が高く、最近注目されている圧排浸潤の概念との関係が示唆された。以上の結果は、2017年4月の第106回日本乳癌学会総会で発表した。次に、初期浸潤性乳癌の浸潤巣の形態把握について、連続切片を用いた3次元立体構築を試みた。手技は概ね確立できたため、免疫組織化学を交えて解析を行うことが可能な状況となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例データベースについては、完成にまでは至っていないが、概ね抽出と統合が完了している。完成次第、データベースから検討項目を抽出した、複数の研究プロジェクトを立ち上げることが可能と考えている。免疫組織学的研究については、計画した中から一部のマーカーについて、初期浸潤癌と非浸潤癌についての検討を行い、それぞれ成果を学会発表した(日本乳癌学会、日本病理学会)。また、病理組織像の3次元立体構築解析については予備検討を行い、成果が得られ、今後の応用も可能となった。さらに、研究領域の病理画像について、人工知能を用いた解析を行うための基盤を整えることができた。 研究経費については、免疫染色の試薬等を購入する必要があったために、全体を物品費に充てた。
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今後の研究の推進方策 |
免疫組織学的研究に関しては、これまでに用いてきたマーカーに加えて、過去に試みたことがあるレクチン染色等を追加すること、前癌病変と目される組織像に対しても染色を試みることによって、仮説をさらに検証する。また、多数の症例数を解析するために、過去の症例のデータベースを構築する。このことによって、背景乳腺を含む癌の臨床画像と、病理像を対比するための足がかりをつかみたい。臨床病理学的研究としては、背景に前癌病変を含む乳癌症例を集積し、その特徴について臨床病理学的な解析を行う。研究計画に入っているEMTマーカーについては、安定した染色結果を得る必要があり、染色法の策定に努力する。乳管内病変の良悪性鑑別診断は比較的難しいとされており、より客観的な判断を行うために、人工知能を用いた判定の検証実験を開始する。その成果を基盤に、早期乳癌に対するこれまでとは違った病理学的分類法が提唱できるか、検討を進めたい。 なお、前年度の研究経費の未執行分については、平成29年度交付額と合わせて免疫染色試薬の購入に充てる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫染色用試薬を購入する目的で、直接経費を全て物品費に充てたが、染色の進捗状況から、年度内に全ての予算を執行できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
免疫組織染色用の抗血清等の試薬を、平成29年度執行額と合わせて購入する予定である。
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