研究実績の概要 |
乳腺の非潤性乳管癌77例及び5mmまでの初期浸潤癌78例について免疫組織染色を施行した。筋上皮に発現するインテグリン(アルファvベータ6)と癌細胞の核に発現するEZH2は、高度核異型など高悪性度腫瘍で高い発現を認めた。癌の細胞質に発現するIDO1は低悪性度腫瘍に発現が高かった。3者とも非浸潤性乳管癌、初期浸潤癌に共通した傾向を示し、乳癌の悪性度を早期から認識可能な新たな指標となり得ることが示された。間質に発現するMMP-9は、非浸潤性乳管癌に比して初期浸潤癌で発現が強く、その程度は浸潤径にも依存しており、癌浸潤に対する間質反応マーカーと目された。研究成果は第106回日本病理学会総会(2017年4月)と第26回日本乳癌学会総会(2018年5月)において発表した。前癌病変→非浸潤癌(上皮内癌)→浸潤癌に至る過程については、乳癌の核異型度やバイオマーカー発現(ホルモン受容体、HER2発現)の状況により多彩であるものと予測されるが、これまでの学問体系においてはホルモン受容体陽性乳癌に関する過程のみが述べられており、今回明らかにした高悪性度乳癌、ホルモン非依存性乳癌においては十分な検討がなされていない。そこで、次の研究へのステップとして、乳癌の発生過、程に関する総説を作製し性乳癌に関する過程のみが述べられており、今回明らかにした高悪性度乳癌、ホルモン非依存性乳癌においては十分な検討がなされていない。そこで、次の研究へのステップとして、乳癌の発生過程に関する総説を作製し、卵巣癌、子宮頸癌、子宮体癌と合わせ、書籍として出版した(Pathology of Female Cancers. Precursor of Early Stage Breast, Ovarian and Uterine Carcinomas. Takuya Moriya, Ed., Springer. 2018年)。
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