研究課題/領域番号 |
16K08707
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
井村 穣二 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (80316554)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 膵癌 / Interleukin-32 / 浸潤 |
研究実績の概要 |
悪性腫瘍の中でも膵癌は他臓器と比較しても、浸潤転移が高頻度であり、その結果、予後が不良で生物学的にも悪性度の高い腫瘍の筆頭でもある。特に高い浸潤能は、膵癌のもう一方の特徴と一つである高度の線維化を伴った間質内でも、容易に浸潤することを反映しているものである。ではこれらの高い浸潤性を成業している機構はどの様なものあるのか、また、それらを構成している因子はどの様なものであるのか、現在までの所、明確化されていない。 本研究ではまず、各種の膵癌細胞株より高浸潤性の細胞を樹立し、それらの細胞において高発現している因子を同定することである。次に、同定された因子について、直接的あるいは間接的に浸潤を規定しているのか検討することである。 以上の背景と目的を踏まえ、まず、高浸潤性細胞株を樹立することができ、さらにそれらの細胞において発現が亢進しているものを選択、その中でもInterleukin-32:IL-32が有意に亢進していることを確認した。このIL-32がどの様に膵癌の浸潤機構に関わるかを検討するのが本研究の趣旨である。特に、細胞増殖、遊走能などの関連性、発現の制御により浸潤性に変化をもたらすか、これらの点を当初の検討課題とする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌における浸潤を規定している因子を同定する目的で高浸潤性膵癌株を樹立した。これらの細胞において高発現している諸因子を同定することができ、その中でもInterleukin-32:IL-32が高発現していることを見出した。一方、これらの高浸潤性細胞株で発現が亢進しているIL-32をsiRNAによるNock downあるいはexon3領域をを選択的にNock outした系では有意にその浸潤性が減少していることを確認した。さらに、IL-32の高発現Vectorを作成し、低浸潤性細胞株に遺伝子導入したところ、浸潤性の亢進を認めた。細胞遊走能は、浸潤能と相関しており、高浸潤性細胞株では高遊走性を示すだけでなく、Nock down、Nock out系でも減少していた。細胞増殖能は何れの系とも有意な差異は認められなかった。IL-32により制御を受けている因子の同定を行ったが、現在までの所、共通した因子は同定できていない。但し、Nock down、Nock out系では共通して細胞接着因子であるE-cadherinやLaminin-5 γ2鎖の亢進を認めることより、何らかの細胞接着性の減少が浸潤能と亢進と関与していることと推察された。個々の細胞の形態変化は著しく、高浸潤株は親株で観られた多稜形から一様に紡錘形細胞へと変化していた。膵癌組織におけるIL-32の免疫組織化学的検討では、浸潤先進部を優位にその細胞質内発現を認めた。 以上の結果より、IL-32は膵癌の浸潤能と何らかの因果関係を有していることが考えられてた。今後は、IL-32のPromoter活性の同定と下流域で制御を受けている因子の同定を試みる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、IL-32のPromoter活性の同定と下流域で制御を受けている因子の同定を試みる予定である。また、浸潤能と転移能には密な関連性があると推察され、ヌードマウスへの同所移植を試み、周囲臓器や遠隔転移の有無に関して検討を行う。
|