研究実績の概要 |
以下の2点について報告する。1. Translesion DNA合成(TLS)やDNA二本鎖切断(DSB)の誤りがち修復に関わるPOLQの、ヒト肺腺癌での異常や癌化への役割について検討した。癌ゲノムアトラスデータおよび大学附属病院検体の解析で、POLQは肺腺癌においてmRNAおよび蛋白質レベルで高発現を示した。臨床病理学的因子では、POLQ蛋白質高発現はリンパ節転移、高臨床病期と関連した。また、POLQ mRNA高発現群では体細胞変異数が有意に高値を示した。肺癌細胞株で誘導性POLQ高発現株を樹立し検討すると、POLQ高発現株では、DSB誘発剤に対して耐性を示し、また、supFアッセイで高い変異頻度を示した。さらに、POLQ高発現肺腺癌では中心体に局在を示すPLK4が有意に高発現していたため、POLQおよびPLK4を高発現させた肺癌細胞株を観察すると中心体過剰複製が認められた。10個のTLSポリメラーゼ中ではPOLQのみが高発現と変異数上昇との関連性が高かった。以上より、POLQ高発現は肺腺癌に関与しており、そこに中心体過剰複製も関わることが考えられた。2. 中心体に局在したり、中心体数的制御に関わるものがあるDNAグリコシラーゼ群の多種の蛋白質を精製し、酸化的損傷塩基5-ヒドロキシウラシル(5OHU)に対する活性を検討した。すると、NTHL1等のDNAグリコシラーゼが5OHU:G基質に対し修復活性を示した。NTHL1は大腸に多発腺腫/癌を起こす遺伝性疾患であるNTHL1関連ポリポーシス(NAP)の原因遺伝子であることから、そのvariant型の修復機能評価を行った。すると、Q90X, Y130X, R153X, Q287XはDNA切断アッセイで低活性を示し、かつsupFアッセイで5OHU誘発変異の抑制能を示さず、NAPの病原性アレルである可能性が示唆された。
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