研究課題/領域番号 |
16K08712
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
坂下 直実 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (90284752)
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研究分担者 |
西辻 和親 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (40532768)
菰原 義弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (40449921)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ACAT1 / コレステロール / 後期エンドゾーム / 小胞体 |
研究実績の概要 |
高悪性形質を示すACAT1陽性悪性腫瘍について免疫染色を用いた検討を行った。脳腫瘍、肺癌、乳癌、食道癌、胃癌、大腸癌、膵癌、胆管癌、肝細胞癌、子宮癌、卵巣癌など多彩な臓器由来の腫瘍細胞がACAT1陽性像を示していたが、これらの悪性腫瘍に由来する腫瘍細胞株の大部分はACAT1阻害剤存在下でも有意な腫瘍増殖抑制効果は示さなかった。われわれが確認した範囲では、脳腫瘍細胞株U251MGならびに前立腺癌細胞株PC-3にはACAT阻害薬存在下に腫瘍細胞の増殖抑制を示していた。U251MGを用いた解析ではACAT阻害薬添加によりAktとERKの活性化が抑制され、細胞内遊離コレステロールエステル化阻害によりこれらのシグナル伝達系が阻害を受けることが示された。 U251MGならびにPC-3はいずれもヒアルロン酸受容体であるCD44を発現しているが、これらの腫瘍細胞の培地内にヒアルロン酸を添加しても腫瘍の増殖には影響が認められなかった。従って、少なくともU251MGならびにPC-3においてはCD44を介した腫瘍増殖シグナル経路は否定的である。但し、現時点では高脂血症病態(LDL添加培地)におけるCD44の役割は検討していない。この点については本年度中に追加検討を行う予定である。 一方、悪性リンパ腫細胞を用いた解析では高脂血症病態に依存して腫瘍細胞が増殖するが、この増殖はACAT阻害薬に影響を受けない一方でスカベンジャー受容体の一つであるCD36に依存して増殖することが示された。この現象がU251MGやPC-3においても再現できるか検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題採択直後から体調を崩して長期の継続加療を行う必要に迫られ、研究に従事する時間的余裕と精神的余裕を失った。約1年間の治療により病状は改善してきたため、本年度から当初の研究目的に沿ってACAT1陽性腫瘍のコレステロール依存性のメカニズム解明に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ACAT阻害剤に対して感受性を有する脳腫瘍細胞株U251MGならびに前立腺癌由来細胞株PC-3を用いてこの腫瘍細胞が高脂血症病態(高LDL血症)においてACAT1陽性小胞とACAT1陽性後期エンドゾームを誘導するかどうか検討する。また、これらの腫瘍細胞が悪性リンパ腫と同様CD36依存性の増殖を示すかどうかも合わせて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用金額は293円であり、この額に一致する消耗品購入が不可能であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に使う試薬や実験機器についてメーカーの特価セールなどを利用して予定より安く購入できたため、次年度使用額が生じた。
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