我々が健常マウスの肝臓から分離したICAM-1(+)肝前駆細胞は、大部分が単核の肝細胞である。前年度に行った染色体の倍数性(ploidy)解析から、diploid(2N)とtetraploid(4N)の細胞が存在していることが明らかになった。本年度は、Hoechstを生細胞に取り込ませる方法の至適化を行い、2Nと4N肝細胞を分離することで、肝細胞のHeterogeneityについてさらに詳しい解析を行った。細胞分離とColony assayを複数回行い、2N細胞はクローナルに増殖しコロニーを形成する細胞を含んでいることを確認した。分化マーカーなどの発現を定量PCRによって調べた結果、Zonation関連遺伝子であるGlutamine synthetaseの発現量に有為な差は見いだせなかったが、Cyp1a2発現が2N細胞で有為に低いことが明らかになった。以上の結果から、健常肝臓の肝前駆細胞はdiploid ICAM-1(+)細胞の分画に濃縮していることが明らかになった。ICAM-1(+)EpCAM(-)細胞は中心静脈周囲には存在していない可能性が高い一方、2Nと4N細胞の間では、その分布に差がない可能性も明らかになった。 肝細胞の分化可塑性の制御機構を明らかにするために、Notch signalとGrhl2による脱分化・分化転換の制御機構の解析を引き続き行った。Notch細胞内ドメイン(NICD)とGrhl2導入後にDDC混餌を与えて慢性肝障害を負荷すると、一部の細胞が胆管上皮細胞様の細胞に変化していることがわかった。一方、CDE餌を与えて慢性肝障害を誘導しても、遺伝子導入細胞が胆管上皮細胞に分化転換することはなかった。
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